<2015年のF1を楽しまなきゃ損>アジアの一企業が世界最高峰モータースポーツへ参戦する意義と誇り


岩崎未都里[学芸員・美術教諭]

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いよいよF1にホンダエンジンが帰ってきます。

2月10日、本田技研工業の伊東社長はジェイソン・バトン等と今期F1へ「マクラーレンホンダ」としての参戦記者発表会見を行いました。2000年のBAR・ホンダのF1参戦時に、お仕事で関わりました筆者は感慨深く見ておりました。ですが、驚いたことに、ファンの皆様の反応が、ファンゆえなのか非常にネガティヴなのです。

「一貫して参戦してない、会社の企業理念が曖昧だからだ。」

「エンジントラブルが多い原因はスタッフの対応が遅いのだな。」

「たった1500ccの小さいエンジンなんてF1と認めない。セナ全盛期は面白かったのに。」

・・・といった大きな勘違いした苦言を言う方々がとても多いのです。伊東社長の辞任発表やマクラーレンホンダのテスト走行の結果が芳しくないNEWSがファンの不満・不安を煽ったのでしょう。

最も多い苦言・文句、ネットでの書込みは、次のようなものです。

「セナがチャンピオンだった時代のF1は面白かった、今のF1はつまらない。」

数年ぶりの参戦をまず喜ぶべき、ということを理解して欲しい、と筆者は心底思います。過去、HONDAF1、他社GP2、全日本F3000他のレースのピット内マシン横で仕事をしていた筆者が説明します。

F1は1950年にイギリスで始まった自動車レースの世界最高峰です。F1のFはFormulaの略、「レギュレーション」つまり「規格」を表します。FIA(国際自動車連盟)の定める「規格1」のマシンを用いて行うレースがF1です。 2015年のエンジンに「レギュレーション」はV型6気筒1600ccシングルターボです。

ちなみに、1988年に16戦15勝し、アイルトン・セナが初めてチャンピオンになった時のマクラーレンホンダMP4/4のエンジンはV型6気筒1500㏄ツインターボであり、最も苦言・文句書込みの多い、「セナ全盛期の面白かった時代のF1」と今のレギュレーションは非常に近いのです。

違いは現在のF1はエネルギー回収システム(Energy-Recovery System = ERS)を搭載していること。ERSとは回転エネルギーと熱エネルギーを利用する一種のハイブリッドシステムです。そう、今のF1はパワーだけでなくエコも世界一なのです。エコだからこそ、将来の市販車の低燃費化につながる技術が磨けると、HondaはF1復帰を決意したのです。

これに関しては51年前の1964年に初めてF1参戦した初代F1監督、中村良夫さんの著書にこう書かれています。

「本田技研工業としてはグランプリに参加に当たって常に一貫して流れていたのは技術開拓であり、HONDAの宣伝などが、その主目的ではなかった。ケチな企業精神の発露ではなく、より次元の高い本田技研のポリシーを背景にして、私達は初めてグランプリに参加できたのだ。」

筆者はF1が世界最高峰なのは、チームやドライバーだけでなく最先端技術こそが主役なのではないか、と考えます。世界一速いクルマを作れるのはどこか?といった世界の最先端自動車技術競争ですからね。同時にF1は 「グランプリ・サーカス」とも呼ばれ、転戦先の世界各国では有力者や文化人などの階級社会の国々の社交場でもあるのです。

俯瞰してみてください。

元々は欧州だけのF1グランプリの世界に、日本はアジア唯一の企業ながら参戦しているのです。

ここまで成し遂げられた日本企業の技術開発への努力が実った奇跡と、世界最高峰モータースポーツで自国参戦チームを、喜んで見守り楽しまなきゃ大損だと筆者は思います。

 

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岩崎未都里

岩崎未都里(いわさき・みどり) 11歳より芸能事務所所属。多摩美術大学美術学部映像学科卒。学芸員。英国留学やバックパッカーの経験を通して、32カ国を渡り歩く。その間、パニック障害を完治させた。SJS症候群により九死に一生を得て、現在は闘病しながら あらためて医療心理学を学んでいる。