<何が起こるかわからないゲーム市場>任天堂とDeNAの業務提携を現役ゲームクリエイターはこう読む


八坂亮[ゲームクリエイター]

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最近遊んだゲームの中でもトップクラスに面白かった「ゼルダの伝説ムジュラの仮面」について原稿を綴っている最中、任天堂とDeNAの業務提携というニュースが飛び込んできた。

せっかくこういう場で自分の意見を発信するチャンスをもらっているのだから、「ムジュラの仮面」については次に回すとして、このニュースについて筆者も自分の意見を書いておこうと思う。

  • 世間の流れには抗えなかった任天堂

まず、率直な感想は「残念」だ、ということ。

どんなに窮地に陥っても、ファミコンやDS等の自分たちで作った土俵でゲームを提供する事を貫き通してきた任天堂が、iPhoneやAndroidといった他人の作った土俵でもゲームを出す事になったわけだ。自分の力で世間の流れを変えられなかった事の結果が今回の出来事であるように思う。

スマートフォンの普及台数とゲーム専用機の普及台数を比べれば圧倒的にスマートフォンに軍配があがるのだから当然の判断とも言えるが、一つの時代の終わりを感じさせてしまったことはやっぱり残念。「貫き通して欲しかったな」という思いは込み上げてくる。ただし、今後に向けて期待できる事も多いとも思う。

  • スマホのゲームの世界を任天堂が変える

少し前、ソーシャルゲームという言葉が世の中を席巻していた頃、カードバトル系と言われるような画面をクリックするだけのゲームが溢れていた。課金システム「ガチャ」が話題になったり問題になったりしたのもこの時期だ。この後、スマートフォンが台頭してきて、表現力も豊かになって今に至るわけだが、ワンクリックで遊ぶゲームやガチャは健在だし、考え方の根っこに大きな変化は感じられない。

しかし、こういったゲームを考えると、やはり内容的には物足りなさは覚えるし、遊び以外の部分でお金を荒稼ぎしようとする感覚はやっぱりイビツな世界だと感じる。

言うまでもなく、任天堂の考え方やポリシーと現在のモバイル市場は大きく乖離している。ここに関して岩田聡・任天堂社長が何度も述べた「任天堂なりの答え」がどのようなものになるかが重要だ。

任天堂は、ファミコン時代からコツコツと積み上げてきた「安心感」で子供と親から信頼を勝ち取ってきた会社で、この信頼はいわば企業としての生命線。ここを保つためにも、ビジネスの仕方までスマートフォンアプリの世界に染まるとは考えづらい。従来通り、豊かなアイデアでしっかり作られたゲームを主軸にスマートフォンアプリの世界に展開する事は間違いないのではないかと思う。

もしかすると、任天堂がスマートフォンにゲームを提供する上で、クリーンな形でビジネスとして結果を残すことができればスマートフォンアプリの世界から前述の歪さが緩和されるきっかけになるかもしれない。いずれにせよ、何かしらの変化が生まれる事は期待したい。

  • 任天堂自身が変化するきっかけに

もう一つ、今回の事で任天堂にもポジティブな変化が起こるかもしれない。

昨今のゲーム機はネットワークにつながる事が前提で、ネットとゲームのスムーズなやり取りが必要不可欠となっている。しかし、任天堂はここが弱点だ。会員制サービス「クラブニンテンドー」はポイント登録までに入力する事が多く手間がかかり、ゲーム機との連携も乏しかった。また、ゲーム機内のダウンロードショップは情報の検索に時間がかかり、ダウンロードするのに一苦労する等、一人のユーザーとしてあまり使い勝手の良い物ではないと感じていた。

会見の中で、「クラブニンテンドー」に関してはDeNAの協力を受けて新サービスに移行する事が表明されたが、このような今まで任天堂だけでは補いきれなかったネットワーク関係の部分が強化され、さらに進化するきっかけになるように思う。次世代ゲーム機NXについても、DeNAの力を借りてネットワーク機能を大幅に強化したゲーム機になるのではないだろうか。

  • 何が起こるかわからない面白い時代へ

今回の発表は衝撃的ではあったが、裏を返せば「今のゲーム業界は、何が起こっても不思議ではない面白い時代なんだ」ということを改めて示したニュースだったかもしれない。スマートフォンアプリと家庭用ゲームの更なる融合が進むかもしれないし、ゲーム事態が新しい形に変わってしまうかもしれない。

この出来事が今後に向けてどのような影響を及ぼすのか今後もしっかり追っていきたいと思う。

 

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八坂亮

八坂亮(やさか・りょう) ゲームクリエイター 1986年、大分県生まれ。大手ゲームメイカーにて、家庭用のゲームソフト開発を行う傍ら、『らくがきラボ』名義でスマホ向けゲームも開発にも従事。一人でも多く人に「ゲームが楽しい」と感じてもらえるよう日々精力的に活動中。