顔だしNGアーティストGReeeeN「9周年だよ!!10周年目前ツアー『9SJ』」の一体感

映画・舞台・音楽

黒田麻衣子[国語教師(専門・平安文学)]
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この夏、デビュー9周年を迎えたGReeeeNは、全国各地のZeppを中心にライブツアーを行った。その名も「9周年だよ!! 10周年目前ツアー『9SJ』」。
キャッチーなメロディーと、強いメッセージ性のある歌詞で、多くの人たちの心を鷲掴みにして離さないGReeeeNだが、メンバー全員が歯科医師として働いてもおり、医療との両立を考えて、一切メディアに顔を出していない。
そのGReeeeNが、どんなライブを見せてくれるのか、想像もつかなかった。強い好奇心が抑えられず、筆者はツアーの最終、Zepp東京でのライブに駆けつけた。

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(写真提供:Universal Music)

入り口前で、開演を待つファンの姿は、他のアーティストライブと何ら変わらない。ツアーのオフィシャルTシャツを着ている人、オフィシャルタオルを肩にかけている人、顔にペインティングを施している人、みんなみんな、笑顔で開演のその時を待ちわびている。
最初の違和感は、会場内でのアナウンス。他のアーティストと違って「携帯電話の電源をお切りください」の声が、聞こえない。どうした? 良いのか、電源切らなくて。
その疑問は、ライブ中盤で解消された。なんと、「はい、みんな、ケイタイ持ってる人は出してくださーい。公式サイトにアクセスしてね!そして、投票してくださーい!!」というメンバーからの呼びかけ!! そして、会場中がケイタイぽちぽち。さすがは、クラウドコンピューティンググループの先駆けだ!
GReeeeNのライブは、音楽と映像と光のセッションがすばらしかった。顔出しNGのメンバーは、お顔がわからない程度の、でも等身大の映像で舞台に「登場」した。躍り、歌い、MCで盛り上げる。中盤のロングMCでは、ラジオ放送よろしく、姿が消えて、代わりにセリフテロップがスクリーンに踊る。
バラエティでのセリフテロップに馴染んだ世代には、笑い倍返しになりそうな仕掛けである。もちろん、会場中は大爆笑。筆者も腹を抱えて笑ってしまった。
とはいえ、GReeeeNの魅力は、なんと言っても楽曲のすばらしさだ。キャッチーなメロディもさることながら、心の深いところに訴えてくる歌詞の世界観が、彼らの最大の持ち味だ。力強いメッセージが、古典の和歌のような美しいリズムに乗せられて、奏でられる。
ライブでは、その持ち味を最大限に活かす演出が施されていた。音楽がデジタル化されていつでも持ち歩けるようになった分、歌詞カードを眺めながら楽曲を聴くことは、少なくなったように思う。ライブでは、メンバーが歌い踊るその頭上に、歌詞が表示され、歌の世界観に見合った映像が映し出されてくる。聴覚だけでなく、視覚にも訴えてくるフレーズは、いつもの何倍もの力を持って、心に染みいってきた。
オープニング「オトノナルホウヘ!!!!」で始まり、「道」「刹那」でGReeeeNの世界観に引き込み、「メシ I GOT IT↑↑」ではともに躍り弾け興奮し、MCでは大笑いさせ、「キセキ」「遥か」でまた、会場中を深い感動に包み込む。アンコールでは、新曲の「SAKAMOTO」で龍馬もどきが出現して大笑いし、「weeeek」を大合唱して大いに盛り上がった。
体験型エンターテインメントとして、本当に充実した2時間であった。「どうせ顔出ししてないんでしょ?」なんて、ちょっと斜に構えていた自分を心底後悔した。
Zeppという、大きすぎない会場だからこその一体感。親近感。ライブ終了後、会場が明るくなってから流れてきた”お見送りソング”の「キセキ」に、誰一人会場を後にすることなく、そこにいる全員で合唱した。いや、してしまった。楽しい愉しい2時間であった。
 
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