<吃音を知るためのガイド>ドラマ『ラヴソング』を見て吃音に興味を持った人へ
青木英幸[発達障害を持つ社会活動家]
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フジテレビで放送されている月9ドラマ『ラヴソング』。「吃音」(きつおん[どもること])を持った人をドラマを見て初めて知ったという人もいるのではないでしょうか。
本稿では、ラヴソングを見て吃音について少しでも興味を持った人へ書籍や映像作品を紹介したいと思います。
『ラヴソング』では、実際に出版されている書籍が登場しています。まずは、専門書になってしまいますが『吃音の基礎と臨床 統合的アプローチ』(バリー・ギター著、学苑社)という書籍。この本は第1話に出てきますね。
次に『吃音検査法』(小澤恵美ほか著、学苑社)。こちらは吃音に携わる医療従事者向けの内容の専門書で、ドラマ第1話の後半に登場しています。
第2話にはインテルナ出版の『スピーチ・リハビリテーション』(西尾正輝著)という書籍も登場していますが、いづれも専門書なので一般の人にはオススメできません。
では、一般の人が吃音に興味を持ち、吃音のことを知りたいと考えた場合どんな書籍などがよいでしょうか。まず筆者がオススメするのは今回『ラヴソング』を監修している九州大学病院耳鼻咽喉科の医師である菊池良和氏の著書です。
【参考】<当事者が語る>フジテレビ「ラヴソング」でドラマ化されたリアルな吃音(きつおん)
講談社の『吃音のことがよくわかる本 』(菊池良和監修)が一般の人でもわかりやすいでしょう。イラストも多くとてもわかりやすく解説されているため読み進めやすいはずです。
『エビデンスに基づいた吃音支援入門』(菊池良和著、学苑社)、『吃音のリスクマネジメント:備えあれば憂いなし』(菊池良和著、学苑社)は少し専門的な内容になりますが、ぜひ読んでほしい本です。また、菊池良和氏のエッセイである『ボクは吃音ドクターです。』(毎日新聞社)も読み応えがあります。
教育関係で働く人にオススメする書籍もあります。吃音のある子どもと接するときの方法などがわかります。
『特別支援教育における 吃音・流暢性障害のある子どもの理解と支援』(小林宏明・川合紀宗編著、学苑社)や『学齢期吃音の指導・支援(改訂第2版)』(小林宏明著、学苑社)、『吃音のある学齢児のためのワークブック:態度と感情への支援』(リサ・スコット編、学苑社)の3冊が理解しやすいのではないかと思います。坂田善政氏は『ラヴソング』のエンドグロールにも名前がでてきます。
【参考】<月9「ラヴソング」>なぜ臨床心理士・福山雅治は恋に落ちてはいけないのか
吃音を扱った漫画作品もあります。
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(押見修造著、太田出版)は、吃音を持った女子高校生のリアルな描写が表現されている漫画です。
押見修造氏と言えば、『漂流ネットカフェ』『悪の華』『スイートプールサイド』などの人気漫画の作者として有名なのでご存知の方も多いのではないでしょうか。実は、押見修造氏自身が吃音者です。
少し昔の漫画作品になってしまいますが、『風子のいる店』(岩明均著、講談社)という喫茶店で働く吃音女性の作品。こちらは『寄生獣』の岩明均氏が書いた漫画です。
もちろん、吃音をテーマにした扱った小説もあります。重松清氏による『きよしこ』、『青い鳥』(いづれも新潮社)などです。重松清氏も吃音者ということで、吃音者のリアルが克明に表現されています。『青い鳥』は阿部寛の主演により映画化もされています。
次に吃音を扱った映像作品を紹介します。
有名な作品としては、映画『英国王のスピーチ』があります。コリン・ファースが演じるイギリス王ジョージ6世、ジェフリー・ラッシュが演じる言語療法士ライオネール・ローグ、ジョージ6世が吃音に悩み、家庭環境や王室の人間であること、世界が戦争状態になっていること、複雑な状況が絡み合いながら吃音と向き合う映画です。英国王が吃音者? とびっくりする人もいるかもしれません。
吃音をメインに扱った映画ではありませんがジャック・ニコルソンが出演する映画『カッコーの巣の上で』にも吃音者が登場します。映画ではビリーという役が吃音者です。この吃音者の描写はとてもリアルで、『ラヴソング』で扱っている藤原さくらの吃音とは少し違う吃音者を見ることができます。
真珠湾攻撃を描いた映画『パールハーバー』にも吃音者が登場します。ユエン・ブレムナーが演じる軍人レッド・ウィンクルが吃音者です。こちらも藤原さくらの吃音とは別の吃音が描かれています。
いかかでしょうか? 吃音の世界、吃音者の心境や困り事などが別の視点から捉えることができるのではないかと思います。
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