<「新卒一括採用」見直し>卒業してからゆっくり企業を選ぶべき[茂木健一郎]

社会・メディア

茂木健一郎[脳科学者]
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世耕経済産業大臣が、NHKのインタビューに対して、新卒一括採用の見直しを働きかける考えを表明された。すばらしいことだと思う。世耕大臣のお考えの詳細をすべては知らないけれども、以下では、新卒一括採用についての私見を、改めて述べたい。
まず、年齢(生年月日)や経歴(卒業見込み)で、企業への就業の機会を一律に制限する新卒一括採用のあり方は、そもそも、雇用の機会均等の精神から見て、違法、ないしは違法の疑いが濃厚だという当たり前の事実を確認したい。国際的に見れば、日本の新卒一括採用が合法的という理解は難しいだろう。
新卒一括採用は、採用活動によって学生たちの勉強の機会を奪うとともに、企業側にとっても、一時期に大量の志願者が殺到することで、質の高い選考ができないというデメリットがある。他の選択肢は通年採用であり、こちらの方が志願者にとっても、企業側にとってもメリットが大きい。
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通年採用で、常にjob applicationを受け付けることで、学生側は、きちんと卒業してから、ゆっくりと企業を選ぶことができる。企業側も、採用のプロセスを通年でならすことで、一人ひとりの選考にかける時間を増し、より質の高い人材をとることができる。
ネックになっているのは、日本独特の「履歴書に穴があく」という奇妙な強迫観念であろう。あたかも、いつも「所属」という首輪をつけていないと安心できない飼い犬の群れのような集団心理は、もはや時代おくれ。履歴書の空白、大いに結構。そもそも、組織に所属することが人間の存在証明ではない。
新卒一括採用は、経済のIT化、今後の人工知能の発展、グローバル化という時代背景と整合性がない。日本が経済発展するための「第三の矢」としても、新卒一括採用の見直しは大いに意義があると考える。世耕大臣のお考えを支持し、経済界の勇気ある改革に期待したい。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 
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