<外来種は悪くない?>日本で愛される七草もアメリカでは有害植物

社会・メディア

保科省吾[コラムニスト]
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アライグマ、タイワンザル、ヌートリア、マングース、カミツキガメ、ミシシッピアカミミガメ、ウシガエル、ブラックバス、ソウギョ、ブルーギル、アメリカシロヒトリ、イエシロアリ、ウリミバエ、アメリカザリガニ、アフリカマイマイ、オオアワダチソウ、オオブタクサ、セイヨウタンポポ、セイタカアワダチソウ。
・・・以上は日本生態学会が定めた日本の「侵略的外来種ワースト100」の一部である。日本固有の生態系を危機に追い込むにっくき外来種である、というのがおおかたの日本人の考え方であろう。
だが、外来種というのは本当に悪さだけをしているのだろうか。生態系というのは太古の昔から変わり続けてきたものではないのだろうか、固有種が大切というのはただの感傷論ではないのだろうか・・・と言うのがフレッド・ピアス著『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』(草思社)の趣旨である。
たとえば日本の固有種であるクズ(葛)。万葉の昔から秋の七草の1つ。根を用いて食材の葛粉や漢方薬(葛根湯)が作られ、つるを煮てから発酵させ、取りだした繊維で葛布を編み、湯で溶かしたものを葛湯で、これは固まると透明もしくは半透明になり、葛切りや葛餅、葛菓子(干菓子)などの和菓子になる。
しかしこのクズ、北アメリカでは繁茂力の高さや拡散の速さから、有害植物ならびに侵略的外来種として指定され、駆除が続けられている・・・と聞くとどうか。
一方、筆者が子どもの頃ゆでて食べ生で食べたり、遊びに使ったタデ科のイタドリ(別名スカンポ)は世界の「侵略的外来種ワースト100 選定種」の1つである。地下茎は太く強靭で、生長も早い。
【参考】<印象操作をするテレビ報道>メディアは「事実」を重んじなければ信用されない
19世紀に観賞用としてイギリスに輸出され、旺盛な繁殖力から在来種の植生を脅かす外来種となり、英国ではコンクリートやアスファルトを突き破るなどのわるもんである・・・と言うことを聞いたらどう思うか。
著者フレッド・ピアス氏は次のように言う。

「そもそも外来種と呼ばれる動植物は、在来種が弱っている隙間に自分の陣地を見つけることで生きながらえた。イタドリの場合でも生活排水や工場排水で植生が弱っているところ入り込んで緑を復活させた」
「外来種の駆除より、環境の浄化が必要なのではないか」
「外来種は交雑して固有種を絶滅させるというイメージがあるが、それだけではない。外来種がしげったことでその場所は勢いの弱くなっていた昆虫や小魚のすみかを提供する」
「外来種への嫌悪感は危機を煽ることの好きなメディアが加担しているのではないか」
「知っているものの好感から、知らないものへの嫌悪に続く斜面は滑りやすい」

この主張は直ちに民族浄化や移民拒否政策を連想させる。これらは科学的根拠の薄いただの「思想」や「イデオロギー」ではないのか。固有種(現地人)が離れたところを外来種(移民)が埋める・・・。そのことにも極めて似ている。
そもそも生態系の混乱は産業革命や大航海時代、グローバリズムによって加速度的に進んだと考えるが、それ以前にも生態系は変わり続けていた、そもそも不変で固有の生態系などと言うのはあるのか。
 
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