行き詰った時に脳を解放する「sleep on it」の効用 – 茂木健一郎

ライフハック

茂木健一郎[脳科学者]
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何か課題に取り組んでいて、なんだかこんがらがった感じになり、これ以上押してもなかなか前に進まない、という感触になることがある。そんなときは、無理に押さないで、離れるといい。一つの有効な方法は、眠ってしまうことである。ソファや椅子で、5分、10分の仮眠でもいい。
ほんとうに眠らなくても、目を閉じて、頭をからっぽにして、じっとしているだけでも良い。すると、脳のDefault Mode Networkが活性化して、さまざまな情報を整理してくれる。オフラインのプロセスが進行することで、もつれていた糸が、ほぐれていくのだ。
【参考】脳科学者が考える「To Do List」を使うべきではない理由
英語には「sleep on it」という表現がある。何かの問題について、一晩眠って考える、あるいは小休止をする、という意味である。つきつめすぎて脳が疲れるのを避ける、という意味だけでなく、以上に述べたような、無意識のプロセスに期待する、という意義を持つ。
漫画家にとって、ネームを描くのはいちばん創造的で、きつい作業だが、浦沢直樹さんはつまると、ソファの上で目を閉じて10分とか15分とか眠るという。すると、目が覚めた時にネームができているというのだ。まさに「sleep on it」の効用である。
眠るのが難しかったら、ちょっとオフィスを出て、外を5分くらい散歩するのでも良い。その時のコツは、頭を空っぽにして、今までの問題を考えないことである。意識の中では考えていない状態が、無意識の中では、かえって、その解決に取り組んでいる状態を意味する。つまりは、脳のモードを変えるのだ。
以上に述べた方法を実践する上で一番大切なのは、集中して取り組んでいて、もうこれ以上、と行き詰った状態を察知して、そこから脳をリリースすることを学ぶことである。
だらだらと、同じ課題に取り組んでいるのが一番良くない。集中とリラックスというメリハリが大切なのだ。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 
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