罪なき移民の排斥はもはやトランプ大統領の犯罪行為
上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]
***
<イランやイラクなど7カ国を対象に強行>
ここまでやると、単なる横暴や独善ではなく、テロ対策を名目にした大統領の犯罪行為と言った方がよいだろう。
イランやイラク、シリアなど中東・アフリカの7カ国を対象にしたトランプ大統領による米国への入国拒否の措置である。
<トランプ大統領は永住権を持つ移民の再入国も拒否>
1月29日(日本時間)AP通信の報道などによると、拘束者を含め280人余が米国への入国を拒否され、その中には再入国を拒否された移民もいる。
【参考】<トランプというネタ>「ガチ」が「ネタ」に敗北した米大統領選
7カ国の移民はたとえ米国の永住権を持っていても入国拒否の対象となるため、当該国の社員が現在たまたま米国外にいるIT企業などは、再入国できるか懸念を強めている。
<欧州各国からは「一線を超えた」と批判や懸念>
「米国はもともと移民の国」「その象徴である自由の女神も泣いている」。米国民からはそんな嘆きが聞かれ、トランプ大統領や米国政府に対し各地で早速、抗議行動が起きた。
こうした中で、合法的な在住資格を持つ移民が故国に強制送還されることを差し止めた地方裁判所もあるが、大統領令自体の違法性には踏み込んでいない。
ただ、メイ首相がトランプ大統領と会談し、両国の「特別な関係」を確認したばかりの英国政府も「一線を超えた措置」と批判的なコメント出し、欧州各国からは今回の大統領令に対し、反発や懸念を表明している。
<物言わぬ日本の政府と迫力不足の批判報道>
何の罪もない移民の合法的な在住権や人権を国籍だけを理由に突然、一方的に侵害するのだから、まさに権力による犯罪である。しかし、トランプ氏に及び腰の日本政府は、今のところダンマリの姿勢。
せめてメディアによる徹底批判を求めたいが、残念ながらこちらも総じて迫力不足の観は否めない。
【あわせて読みたい】