<奨学金という名の借金>高すぎる国立大学の授業料

社会・メディア

保科省吾[コラムニスト]

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600万円もの奨学金という名の借金にがんじがらめになって社会に放り出される22歳の若者。あげくに自己破産。

これは特殊な例ではない、多くの大学生がいま、教育ローンを抱えている。なぜ、こんなことになっているのか。調べてみたらいくつかの理由が見つかった。

時代の流れに沿って書いてみる。

<1>国立大医学の学費高騰

1976年には年間3万6000円だった国立大学の授業料は、2017年現在で53万5800円。実に15倍である。なぜこんなに学費が上がったのか。もちろん初年度はこれに入学金28万2000円が上乗せされる。

<2>私立大学からの不公平是正攻撃

私立大学の授業料は同じ1976年でおよそ18万円ほど。2016年現在ではおよそ85万円。こちらは、5倍ほどの高騰である。ただし、これに設備費などが加わり、概ね100万円ほどにはなるが、それでも5.5倍であり、国立大学の15倍には遠く及ばない。

国立大学の授業料が安すぎては競争が立ちゆかないという私立大学側のロビー活動が実り、国はどんどん国立大学の授業料を上げていった、ということが理由であるという。私立大学は、ご存じ文科省お得意の天下りポストを提供してくれる。

<3>無いなら貸すよ。教育ローン。

昔は日本育英会という組織が奨学金を出していたが、今は有利子と無利子の違いはあれ日本学生支援機構という後身の組織が貸す実質「教育ローン」が、奨学金とされている。

無利子の奨学金を借りるのは成績優秀など、ハードルが高い(これは将来予定されている給付型奨学金と同じ)。有利子の奨学金はハードルが低いので(筆者の調査した上での個人的感想で言えば、学力が低いバカ大学に行く人も含め)、多くの人が借りられるだろう、ひと月に12万円を借りられる場合もある。

<4>日本学生支援機構とは名ばかりの借金取り立て軍団

かつて筆者は日本育英会の奨学金を借りていたが、返せなくなった時に電話をしたら親身になって相談してくれた。ところが今の学生支援機構は、消費者金融のように民間の債権取り立て屋に請求権を売ってしまうような怖い組織であるという。

【参考】<奨学金という名の学生ローン>「緩やかな基準で選考」する奨学金こそ害悪

これは組織としてはしょうがないことなのだろうか。日本学生支援機構で、奨学金支援事業をになう正規職員は204人、非正規は214人。職員も半分は非正規雇用なのである。組織の性質から言ってこれはダメだろう。ちなみに育英会時代は429人中、正規が377人であった。

<5>ローンに縛られるより高卒で就職でいいんじゃないの

これには「高卒のひとは企業が望んでいないので就職できない」等の反論が必ず用意されているが、これは現実を正確に伝えていない、ネット上で筆者が激しく同意した意見を載せておく。

【以下、筆者要約】「一般に『高卒程度』とされる国家公務員や都職員の就職試験の場合、(偏差値50以下の)レベルの高校で特に勉強が出来ない生徒ではほぼ合格しません。競争がかろうじて成立する程度の大学入試(バカ大学よりは上のレベルということだ)よりは公務員試験のほうが数段難しいのです。あんまり考え成しに遊ぼうと思って大学に進学する人が多いように見えるのは、『公務員または、それと同等に安定している(高卒での)就職のほうが大半の大学進学より困難である』というのが最大の理由のひとつだと思います。結論としては、『大学進学よりも難易度が高い高卒就職のコースは普通に存在する』ということですね。 仮にそれが可能なレベルまで努力できるなら、それなりの大学にも入学できます」

以下は筆者の考えだが、高卒では就職できないから、600万の借金を背負ってでも、大学に逃げる人もいる、ということである。

<6>筆者が至った結論

以上の議論を踏まえた上で、筆者なりに到達した結論を以下に示す。

*国立大学の授業料を年間10万円未満に下げるべきである。

*奨学金はすべてを給付型にして残すべきである。

*企業・採用者は学歴の条件を志望者に義務づけてはならない。

*バカ大学はどんどん潰すべきである。

 

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