「アベ友」事案・政治家関与の全容解明は時間の問題 – 植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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ダークグレーの疑惑がブラックになった。

そもそも、2016年6月20日に国から学校法人森友学園に払い下げられた大阪府豊中市にある8770平米の不動産鑑定評価額が9億5600万円とされたことがおかしい。

この国有地は、さらに埋設物撤去費用として8億1974万円が控除され、1億3400万円で払い下げられた。しかも、その支払いは一括払いでなく、頭金プラス10回の分割払いだ。隣接する国有地9492平米は、2011年3月10日に国から豊中市に14億2300万円で売却されている。

さらに、森友学園が負担したとされる、地下3メートルまでの埋設物除去費用として、1億3176万円(埋設物対策分が約8632万円、土壌汚染対策分が約4543万円)が、2016年4月6日に大阪航空局から森友学園に支払われている。

しかし、処理されたことになっている産業廃棄物の一部は、敷地内に廃棄されていた疑いが浮上している。

「公金詐取」=詐欺の疑いも浮上している。

このなかで、自民党参議院議員の鴻池祥肇氏の事務所が、2013年8月から昨年3月の間に、森友学園の籠池泰典氏側から15回にわたって陳情を受けていたことが判明した。

この陳情と平仄(ひょうそく)を合わせるように、国有地の賃貸借が実現し、賃料が引き下げられ、不動産購入価格が引き下がり、ほとんどタダ同然で、8770平米の国有地が森友学園の手にわたっている。

安倍首相と安倍昭恵夫人の森友学園との深い関係もすでに明らかになっている。森友学園は「安倍晋三記念小学校」の名称を明記して寄付活動を行っていた。安倍首相は、「無断使用」だとしているが、森友学園を法的に訴えることに対して背を向けている。

訴えを起こすと手間ひまがかかることを法的訴えを起こさない理由だとしているが、

「関与があれば、首相と議員を辞める」

と明言した重大事案であるだけに、安倍首相の「逃げ腰」の姿勢は、疑惑をさらに強めるだけの効果しか発揮していない。裁判に訴えれば、安倍氏の関与が本当にないなら、その事実が法廷で明らかにされるわけで、これを安倍氏が回避する強い理由はないはずだ。

逆に、「真相が明らかになるから提訴できない」と推定されてしまう可能性が高いだろう。

安倍首相は、「自分と妻は、学校認可と土地取引に関与していない」ことを繰り返し、財務省理財局による「政治家の関与はない」の説明を盾に取り、「土地売買の正当性については会計検査院の調査に委ねる」として、これで逃げ切るとのスタンスを示しているが、そうは問屋が卸さない。

森友学園側の政治家への働きかけを示す証拠が表面化しており、これらの証拠の真偽を確かめる必要があるが、仮に、森友学園側の政治家への働きかけが実在していたことが確認されれば、行政トップとして、そして、自民党トップとしての安倍晋三氏の責任は免れない。

「政治家の関与はない」

ことを前面に押し立てて、籠池・森友学園の異常さを際立たせて、安倍首相を筆頭とする行政権力および議会与党の責任を握りつぶす方向で、マスメディア論調が整えられた矢先に、このストーリーの根幹を崩す「政治家の関与、政治家への働きかけ」の事実が表面化したショックは大きい。

財務省の佐川宣寿理財局長は、

 「小学校開校までの時間が切迫していたため、大阪航空局が埋設物撤去費用を算出し、これを控除した金額で森友学園に国有地を払い下げたことに、法的違法性はない」

と主張するが、完全に間違っている。

財政法第9条は、

「第九条 国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」

と定めている。「国の財産は、適正な対価なくしてこれを譲渡してはならない」のである。過大な埋設物撤去費用の控除は、「適正な対価」をもたらさないもので、国の対応は、「財政法違反事案」なのだ。

そして、国有財産に関する行政文書の保管義務は10年であり、昨年3月から6月の、国有財産譲渡にかかる交渉記録の廃棄は、行政文書管理規則に違反している疑いが濃厚である。

佐川理財局長の「政治家の関与はなかった」という国会答弁も虚偽答弁である疑いが極めて強い。

 

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