安倍総理が国会でくり返す『朝日新聞の誤報』 って何?

政治経済

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

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今国会で安倍総理は森友問題の答弁に立つと、たびたび朝日新聞が誤報をしたと非難し続けています。これは情報開示で明らかになった森友学園の設立趣意書上の学校名が開成小学校だったことについて、昨年、朝日新聞が「安倍晋三記念小学校」と誤報?していたという指摘です。

安倍総理は、

「朝日新聞が事実かのごとく報道した」
「裏取りをしない記事は記事と言えない」
「朝日新聞は訂正記事を出していない」

などとこの朝日報道を強く非難し、その上で、

「籠池さん、真っ赤なうそ、うそ八百ではないか」

と籠池批判へつなげる答弁を繰り返しています。この朝日の記事に対する安倍総理の怒りの強さとこだわりにただならぬものを感じ、これが本当に誤報なのか、訂正記事の必要があるのか、そして総理大臣が国会で繰り返し、繰り返し触れるべき話なのか・・・について、朝日新聞の読者ではない筆者はこの際この記事を読んでみることにしました。

なお、記事は一般の図書館にある朝日新聞縮刷版に依っていることをお断りしておきます。

当該記事は朝日新聞2017年5月9日(火)朝刊に掲載されたものです。この頃は、総理が憲法改正の考え方を問われて「読売新聞を熟読して」と答弁して大騒ぎになり、今村復興相が「東北で良かった」発言で辞任に追い込まれた時期です。
さて、この日の朝日の朝刊で森友問題に触れた記事は3本あります。

(1) 1面  「昭恵氏との写真、14年提示」 籠池氏、近畿財務局に

(2) 5面  焦点再録 8日 衆院 予算委員会

(3) 36面  財務省、「校名」黒塗り  録音「当日の会話」は認める

このうち予算委員会の一部を採録した(2)には小学校設立趣意書に関する部分はありません。

(1)は1面左肩6段の記事です。「昭恵氏との写真、14年提示」 籠池氏、近畿財務局にと見出しにあるように主に写真に関する記事で、「2014年4月に撮影したという籠池氏夫妻と安倍昭恵氏(中央)が一緒に写った写真=菅野完氏提供」というキャプションの写真が付いています。小学校予定地の金網を背にして3人がにこにこと笑う、よく見かける写真です。

【参考】安倍昭恵氏の国会証人喚問は避けられない

記事本文は、籠池氏が2014年に昭恵氏との写真を近畿財務局に示したとしているので、「籠池氏の証言どおりなら財務省側が14年時点で国有地の取引を昭恵氏関連の案件と認識していた可能性も出てきた」というのが記事の主旨ですが、この記事中に小学校名に関する記述があります。

『籠池氏が小学校設立趣意書を出したのは、13年9月。籠池氏の説明では、小学校の建設用地として、大阪府豊中市の国有地を取得したいとの要望書を近畿財務局に出した際に添付した。籠池氏は、設立趣意書に記した名称を「安倍晋三記念小学校」としたという。』

これが(1)における小学校設立趣意書に関わる記事部分です。(3)はいわゆる第二社会面左肩に写真や事案の経過表を付し、この日の衆議院予算委員会での森友問題に対する質疑について伝える、まあまあ大きな記事です。記事中、小学校名に関する部分は、

『設立予定の小学校名に首相名があった疑いを指摘した野党に対し、財務省は「不開示情報」として説明を避けた。学園の籠池泰典・前理事長は8日夜、取得要望書類として提出した小学校の設立趣意書に、開設予定の校名として「安倍晋三記念小学校」と記載したことを朝日新聞の取材に認めた。同日午前の衆院予算委で民進党の福島伸亨氏が同様の指摘をした。福島氏に財務省が開示した資料では、設立趣意書のタイトルの他、内容が記された部分が黒塗りだった。福島氏は籠池氏からの聞き取り結果として、タイトル部分に首相名を冠した校名が記載されていた可能性に言及。』

首相名に関わる記事はここまでです。これ以降は、不開示に関する財務省の見解や、録音テープについての記述となっています。そしてもうひとつ、朝日新聞による籠池氏へのインタビューを籠池氏との主なやりとり と見出しを付けて載せています。このうち、学校名に関するやりとりは以下のひとつだけです。

『-近畿財務局に設立趣意書を提出する際にはどういう表記をしたのか。
(籠池氏) 「安倍晋三記念小学校と表記をしていましたね」』

以上が安倍総理がくり返し「誤報!」と指弾する朝日記事の首相名関連部分のすべてです。なお、その後朝日新聞は今年1月に財務省が設立趣意書を開示し、校名が開成小学校だったと判明した際の記事の中で、

『校名などが当初、黒塗りになっていたため、朝日新聞は籠池氏への取材に基づいて、籠池氏が「安倍晋三記念小学校」の校名を記した趣意書を財務省近畿財務局に出したことを明らかにした、と5月9日付朝刊で報じた。』

と書いています。
以上、余計なことは付け加えません。ご判断を。

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