NHK『ブラタモリ』は最初の志を忘れたのか?
メディアゴン編集部
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週に一度のお楽しみは、と言えば土曜日放送のNHK『ブラタモリ』である。「たけしのその時カメラは回っていた」に、差し替えになったときは、見る番組がなくなって一日張り合いがなくなった。
さて、10月17日、ロケ再開2回目の放送では新メンバーの浅野里香アナウンサーも参加している。これは期待はふくらむ。
だが、残念ながら、この日の『ブラタモリ』は、つまらなかった。理由は、番組の志を忘れていたからである。それが最初からの番組の志だったかは知らない。だが、番組が面白くなったのはこの志があったからだと思う。その志とは・・・「地形、地学、地政学、岩石学などと、人間の生活との関わりを描くことに主眼を置くこと」である。
この日はガイドさん、浅野アナと供に、タモリが伊豆大島の火山三原山を登る。冒頭、浅野アナが、タモリとずいぶん離れて歩いている。へばっているのかと思った。これではタモリのしゃべりを拾うことが出来ないだろう、と思っていたが、すぐ気づいた。social distancingなのである。テレビだから律儀に守るのが、もの悲しい。
その後は、三原山の火口と、流れ出た溶岩の成り立ちの違い。吹き上がった噴煙の高さ。北米プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートが交わる三重会合点に位置する伊豆大島の特異性。伊豆大島の東側一帯に広がる黒い火山岩で覆われた日本で唯一の地名「裏砂漠」。これらを丁寧に解説していくのだが、これでは「火山」の番組で『ブラタモリ』ではない。タレントが出ているだけで、教育テレビを見ているようだ。
人間との関わりがまるで、出てこない。火山という自然の驚異の前には人間など何ほどでもない、ということを言いたかったのか。ならば見せ方の工夫が他にもあると思う。さらに、この「裏砂漠」がGLAYや乃木坂46のMVに使われているとして、その映像を流すなどは、付けたしどころか、『ブラタモリ』では、余計な情報である。
「地形、地学、地政学、岩石学などと、人間の生活との関わりを描くこと」にもう一度、立ち戻って欲しい。
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