盛れば盛るだけ信用低下! 印象操作に走る菅総理の愚
両角敏明[元テレビプロデューサー]
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とにかくあらゆる数字が信用なりません。今に始まったことではありませんが、コロナについては政府ばかりか良くわからない数字があっちこっちに。
NHK WEBのコロナ情報です。(6/10時点、厚生労働省や首相官邸の情報をもとに作成)
<日本国内の接種回数>2140万8125回
<1回目接種>1594万2264人
<2回目接種>546万5861人
1回目と2回目の人数を合計すると2140万8125人となりますが、2140万8125回は接種回数と表記されおり、これでは回数と人数が同じになってしまいます。2回目を終えた546万5861人の方々は1人で2回接種していますから、回数なら倍の1093万1722回のはずです。
よってNHKの合計数字がすべて回数ならば
1回目接種済み=1594万2264回
2回目接種済み=1093万1722回 (546万5861人×2回)
を合計して、日本国内の接種回数は 2687万3986回 でないと辻褄が合いません。
NHKにも聞きましたが良くわかりません。「いずれにせよ、わかりにくい数字ということで担当に伝えます」とまとめられてしまいました。
さて菅総理の意味不明の接種100万回越え発言が嘲笑されています。ワクチン接種回数データは不思議なことに厚労省ではなく、内閣府でもなく、首相官邸で公表されています。ここのWEBでは菅首相の100万回発言を恥ずかしげもなくTOPに置いています。
<これまでのワクチン総接種回数>
*医療従事者等:8,959,914回(+136,591)令和3年6月10日
*高齢者等:12,448,211回(+887,922)令和3年6月10日
(+136,591 )と(+ 887,922 )を合計して、まさに菅首相が大ミエを切った「1日に1oo万回接種」の根拠データになるようです。ところが、この表記のすぐ下にある「医療従事者と高齢者の日別の実績」をクリックすると、6/10 (木)時点の最新データとして、
<6月10日>医療従事者への接種:136,591
<6月10日>高齢者への接種:472,644
となっており、合計しても609,235でしかありません。
ヘンですね。菅さん寄りの方々は100万という数字について、「近似値だ」とか、「少し盛っただけ」とか説明しますが、100と60ではまったく違います。大学の成績なら60は不合格ギリですが100なら「優」がもらえます。一国の首相の盛り方としてズル過ぎです。
ではなぜ60万と100万の違いが出てくるのか、これは首相官邸のWEBで説明されています。もちろん読んではみたものの、申し訳ありませんが、何度読んでも私にはまったく理解不能です。メディアも説明するのもバカバカしいのかきちんと説明してくれません。理解不能なのかもしれません。
まあなんとなくの感じですが、自治体からその日の接種回数がリアルタイムで上がってくるわけではなく、自治体によっては何日か分を後日にまとめて上げてくることがあり、ある日に何日か分の遅れデータをまとめて足すと・・・ということのようです。
[参考]<怪しいワクチン供給>菅政権は「奇跡」を実現できるのか?
こういう現象は東京都の感染者数や検査数データでもおこり、およそ1ヶ月ほど経たないと数字が確定しません。しかしこちらは日毎で大きく違ってしまうことはありません。たとえばある日の陽性者数が1000だったとして、1000が1050になる程度なら全体傾向を見るに支障はありません。しかし菅首相のように60万を100万と言ってしまっては、全体傾向がわかりません。メディアの評価も100万なら「順調」でしょうが60万なら「まだまだ」になります。ここをゴマかしてはデータを示す意味がまったくありません。
具体的に、首相官邸が公表しているデータで接種がもっとも多かった日は(6/10時点)
<医療従事者>5/17 (月)349,566
<高齢者>6/8 (火)603,478
で、両方の接種最多日どうしの数字を足しても100万回に達したことはありません。
6月11日の記者会見で河野大臣は、
「1日当たりの接種の実力は80万回くらいある。何とか早期に100万回に達するよう目指したい」
と述べて、現状は1日あたり80万回程度との認識を示しました。実績として6月10日現在で医療従事者と高齢者接種を足して1日あたり80万回接種を越えた日がこれまで2回、70万回を超えた日が7回ありますから、河野大臣の発言が盛り方としては妥当なところです。
菅首相には安倍政権時代から首相の後ろに居座る下品で古くさいセンスの人が入れ知恵してトンデモ数字を言わせているのでしょう。別に「現在80万ぐらいまでは行っている。引き続き100万を目指すのでご協力を」と呼びかければ良いものを、こういうさもしい盛り方をして逆に自身の信用を貶めていることに気づけないことが菅首相自身のさもしさの証左です。
人気テレビドラマ「ドクターマーチン」の舞台、コーンウォールでのG7でも菅首相はまた盛ったようです。記者会見がなかったのも不思議ですが、ぶら下がりで五輪について
「安心安全な形で開催することに対する支持を改めて表明する」
と宣言に含まれたことを菅首相は「全首脳から力強い支持をいただいた」と胸を張りました。しかしふつうに聞けばわざわざ「安心安全な形なら」と条件を付けているのであって、その条件が満たされれば支持するのは当たり前です。現状で力強い支持を得たわけではありません。菅首相との個別会談では米のバイデン大統領も
「選手やスタッフ、観客を保護するために必要なすべての公衆衛生対策を講じ、東京オリンピックが前進することを支持する」
と、かなりの異物が奥歯に挟まったような言い方。ドイツのメルケル首相との個別会談でも色よい返事はなかったのか政府は触れません。さらにこの首脳支持宣言とやらは、全宣言70項目のうちの最後の70番目でしたから、各国首脳にとっては東京五輪はたいした関心事ではなさそうです。
こういう時も、更問い自由の記者会見を堂々と開き、「全首脳から力強い支持をいただいた」などと盛るのはやめて、「私が責任をもって国民も首脳も安心出来るような安全対策を徹底する」と強調すれば国民の信頼感は増すと思うのですが。
どうにも菅首相はズルく情けないイメージがいつまでも拭えません。総理大臣なら、最低限度の正直さ、知性、教養と、リスペクトできる価値観の切れっ端ぐらいは示してほしいものです。
まあ、野党にしてみれば誰にせよ新しい人が自民との総裁になっての選挙よりも、さもしい菅総裁下で選挙に突っ込む方が圧倒的に有利でしょうから、しばらくはこのままでと、ほくそ笑んでいるのかもしれません。
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