IOC&菅内閣に陵辱される日本国民-植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

***

コロナに関する被害状況はほとんど予測できている。人の移動変動とコロナ新規陽性者数がリンクしている。両者には時間差がある。人の移動指数変化が3週間後の新規陽性者数を変化させる。これ以外に、世界の感染波動、流行の中心になるウイルスの種類が影響を与える。

これらの要因で感染の拡大・縮小変動が形成されている。感染を生み出す最大の原因はマスクなしの会話。複数人による会食の際にマスクなし会話の機会が創出される。酒が入れば声が大きくなり、飛沫感染のリスクが拡大する。複数人によるマスクなし会食の機会増大が感染増大を生み出している。大規模イベントと旅行に対して警戒が必要なのは、これらに連動して複数人によるマスクなし会食の機会が創出されるからだ。

3月21日に緊急事態宣言が解除された。2月入り後、人流は拡大していた。3月下旬にかけては卒業式、歓送迎会、花見、観光旅行などの機会が急増する。

菅内閣はこのタイミングに合わせて緊急事態宣言を解除した。3月25日の五輪聖火リレー開始に合わせた強引な緊急事態宣言解除だった。人流は急拡大しており、新規陽性者数の急増がもたらされることを予測したが、実際、その通りになった。

[参考]<止まない炎上>小室禍と東京五輪エンブレム騒動の類似点

菅首相は3月18日の会見で「再び緊急事態宣言を出すことがないようにするのが私の責務」と述べたが、わずか1ヵ月後の4月25日、緊急事態宣言再発出に追い込まれた。人流拡大が新規陽性者数の先行指数であり、その人流が拡大するタイミングに合わせて緊急事態宣言を解除したのだから、感染の急激な再拡大は想定通りの展開だった。

4月25日から緊急事態宣言が再発出されたが、対象とされたのは近畿圏の3府県と東京都だけだった。大都市圏で緊急事態宣言が発出されなかった県に大規模な人流流入が観察された。また、感染拡大地から全国各地への旅行に対する制限がまったく行われなかった。

5月中旬以降に感染拡大が鮮明になった地域は観光立道県が多い。北海道、沖縄、九州各県、石川、岐阜など、GWに観光旅行での人流流入が顕著だった。これらの旅行者がマスクなしの会話を伴う会食を実行した。これに連動して感染拡大が確認されている。

想定通りの現象が現実化している。

昨年11月21日からの3連休前にGoToトラベルを停止するべきところ、菅首相は強引にGoToトラベルを12月28日まで推進した。観光利権優先の行動だが、これが感染爆発を引き起こす。現在の北海道、沖縄における感染爆発原因は、菅内閣がGWに際して旅行を制限しなかったことにある。

完全な人災だ。

より重大な問題は東京五輪。外国から選手、関係者9万人を入国させれば、必ず変異株を流入させることになる。N501Yによる感染拡大が峠を越えたあと、L452Rが感染の中心に置き換わることも警戒されている。「五輪無観客を回避する方向性」が報じられているが、日本の主権者の意思など一切考慮しないというのが、菅内閣、IOC、五輪組織委の共通するスタンス。

「緊急事態宣言下でも五輪を実施」をIOCコーツ氏が述べた。他人の家に土足で上がり込んで傍若無人に振る舞う連中を日本国民は許すべきでない。国民の命と健康を犠牲にして金儲けに走る「反社会的勢力」の暴走を放置してはならない。この「反社会的勢力」と手を組んで、国民の意思を無視した五輪開催強行に突き進むのが菅内閣。

銭ゲバ反社会的勢力を封殺するための方法を検討し、実行に移さねばならない。

[植草一秀の公式ブログ『知られざる真実』はコチラ]

【あわせて読みたい】