立憲主義破壊に加担する立憲民主党-植草一秀
植草一秀[経済評論家]
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自民党が目指す憲法改定の中身を踏まえた対応が必要。
衆議院憲法審査会で国民投票法改正案が自民党、立憲民主党などの賛成多数で可決された。憲法改定が強行される土台作りに立憲民主党が積極的に加担した。立憲民主党は自公等の賛成多数で可決が強行されるなら、CM規制等の付帯決議を確保することが得策と説明しているようだが、誰も賛同しない。安倍政治の下で自公は圧倒的多数の議席を確保してきた。
しかし、国民投票法改正は実現しなかった。安倍壊憲を阻止することの重要性が認識されてきたからだ。法改定を先送りすることは十分に可能だった。
2007年の国民投票法成立時点で、テレビなどのスポットCM規制などが争点になった。この問題を先送りして法律を成立させた経緯がある。今回の法改定でCM規制が定められたのか。
今回の法改定に際して、「施行後3年をめどに法制上の措置を講じることを付則に盛り込む」ことで立憲民主党が法案採決に応じた。しかも、立憲民主党は法改定に賛成した。自民党がどのような憲法改定を目指しているのか。その内容を踏まえた対応が必要だ。自民党憲法改正草案の中身を見てみる。
三つの重大な問題がある。
第一は立憲主義の破壊。
第二は基本的人権の抑圧。
第三はイエ社会への回帰。
である。
さらに、より重大な問題として「緊急事態条項」に「独裁条項」が盛り込まれた点を見落とせない。自民党が目指しているのは「改憲」でなく「壊憲」。この目論見を持つ自民党を破防法の対象に指定することが必要だ。
第一の立憲主義の破壊について。
自民党壊憲案では、
第102条(憲法尊重擁護義務)
1 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。
としている。
現行憲法は、「第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」憲法は国家権力が暴走することを防ぐための砦。これが立憲主義の考え方。
自民党壊憲案はこれを逆転させるもの。国民を縛る規定として憲法を位置付ける。立憲民主党に自民党壊憲案を容認できる余地はない。憲法改定の土台作りに立憲民主党が加担することは立憲民主党の自死行為。
基本的人権についてはどうか。
現行憲法は最高法規の章を設けて基本的人権の重要性を明記した。自民党壊憲案は、その第97条を丸ごと削除。
第21条「表現の自由」では、
「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」
とした制限付きの人権付与に変わる。
第24条に一文が付加される。
「家族は、互いに助け合わなければならない。」
「イエ社会」への回帰を定める条文だ。国民投票法改定後に憲法改定が強行されたとき、立憲民主党はどのように言い逃れするのか。現状の立憲民主党が野党の中心に居座るのでは日本政治刷新を見通せなくなる。
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