<オダギリジョー脚本・演出・編集>連続ドラマ『オリバーな犬』に危惧
高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]
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オダギリジョー脚本・演出・編集のスーパーが燦然と輝く連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK)が始まった。毎週金曜 よる10時~10時45分。堂々のプライムタイムドラマである。NHKが仮面ライダークウガに丸投げしたドラマとあれば見なければなるまい。
脚本・演出までは良いとしても、編集まで任せるとは、よほどの信用感があるということだ。
かつて、こんな経験があったことを記しておく。近頃再映されている桑田佳祐監督映画「稲村ジェーン」(1990)。桑田監督編集版を見せてもらう機会があった。見終わって、これは大変なことになってしまったと顔を上げることができなくなった。意見を述べた。プロの編集マン(編集・鈴木歓氏)に参加してもらい編集し直すことで一致した。
それでもう一度見た。完全に変わっていた。ようやく筆者は顔を上げることができた。編集とはそのくらい大切なもので、プロの仕事とはすごいものなのである。その編集もオダジョー自らがやった『オリバーな犬』。さてどうだったか。
公平を期すため、筆者の要約ではなくNHKの公式HPから、ストーリーの冒頭を引用する。
(以下引用)警察犬係でハンドラーの一平(池松壮亮)は、相棒である警察犬オリバーといつものように朝のトレーニングを終えて、鑑識課に戻ってきた。スーパーボランティアの小西さん(佐藤浩市)が11年間行方不明だった少女の遺体を見つけたという話題で盛り上がる中、とある家で詐欺被害があり出動の要請が入る。家に残る匂いを頼りに捜査する一平とオリバーだったが、オリバーはとんでもないものを見つけてしまい・・・(以上引用)
そして、オダジョーが演じるのは、
(以下引用)自身初となる、まさかの「犬」役。池松壮亮さんが演じる主人公のバディ、警察犬の「オリバー」を演じます。ただし、一見ふつうのシェパード犬なのに、主人公と視聴者にだけ、犬の着ぐるみ姿の「おじさん」に見えるという不可思議な設定です。しかも、ぐうたらで口が悪く品のないキャラクター。(以上引用)
・・・である。
さて、筆者はドラマのストーリーは何かしら「人生の隠喩」になっているものがすぐれていると感じる。その意味は以下のようなことだ。世界一短い文学、俳句。その俳句でも優れたものには「人生の隠喩」がある。
*やせ蛙負けるな一茶これにあり(小林一茶)
*旅に病んで 夢は枯野を かけ巡る(松尾芭蕉)
*春の海ひねもすのたりのたりかな(与謝蕪村)
*咳をしても一人(尾崎放哉)
だから、俳句より長いドラマのストーリーはどこかで「人生の隠喩」なっている部分があるだろう。というのが筆者の主張である。第一回の『オリバーな犬』には、いまの所、「人生の隠喩」はなかった。
その「人生の隠喩」がプロットとなってストーリーが進んでいくはずなのだが、残念ながら話が前に進まない。よく、連続ドラマの一回目は登場人部の紹介が必要なので、という言い訳を聞くが、それは本当に言い訳。話が前に進むように登場人物紹介をすればいいだけだから。これは脚本家の仕事だ。前に進まない話は見るのが辛い。Show must go forward.
[参考]<「ドラゴン桜」と発達障害>ドラマに描かれる発達障害をチェックする
どうやらコメデイのようでところどころにギャグが入るが、ズボンのお尻が破れたり、君は暗いねと言ってしまった上司が、サングラスを掛けていたからだったり、陳腐。さらに、芝居ができない芸人がコントをやると見ていられないのと同様に、『オリバーな犬』では、笑いのわかっていない役者がコメディを演じている。責任は主に演出家。これはしらける。
オダジョーの演じる着ぐるみの警察犬オリバーはハンドラーの池松にだけは着ぐるみのオダジョーとなって見えるし、話もできるというという設定。おそらく、これはこのドラマの肝だから、厳密なルールのもとに表現しなければならないと思うのだが、それが守られていないのはしらける。
神の視点で引きでオリバーを撮ったときは犬そのものに見えているというカットが時々入る。だが、それ以外では、池松の視点なのか、そうでないのがはっきりしないカットがあり、カットを撮り忘れたのか、グズグズになって肝のルールが守られていない。このルールうまく振っておけば、ドラマ後半で爆笑シーンが作れるんだけどなあ。
オダジョーための友情出演ということなのだろう、大物がたくさん出ている。一部だけ上げる。
永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、岡山天音、玉城ティナ、くっきー!(野性爆弾)、永山瑛太、染谷将太、仲野太賀、佐久間由衣、坂井真紀、葛山信吾、火野正平、國村隼、細野晴臣、香椎由宇、渋川清彦、我修院達也、宇野祥平/草村礼子、箭内道彦、芹澤興人、竹内都子、村上淳、嶋田久作、甲本雅裕、鈴木慶一、松重豊、柄本明、橋爪功、佐藤浩市
トメが佐藤浩市。すごい。スーパーボランティアの役だ。あの有名人のコスプレをしてやってくださっているが、それが筆者には痛々しく見えた。橋爪功の役回りはまだわからないが、気にしていた映画のタイトルは『ザ・ビッグ・シェイブ』(マーティン・スコセッシ監督)。
柄本明は、河原に住む謎のホームレスの役、事件のヒントをたくさん教えるひとである。『20世紀少年』(浦沢直樹・作)にでてくる謎の老人とかぶる印象。事件を展開する重要なヒントをかんたんにくれる掃除のおじさん。レスリー・ニールセンの映画に出てくる困ると何でも教えてくれる身も蓋もない情報屋の靴磨きみたいな存在だ。
とりあえず筆者は、このままつまらなく終わるはずはないと思うので、第2回も見ることにしたが、コンテンツ制作者としてのプライドをかなぐり捨てオダジョーに丸投げしたNHKの命運やいかに?
制作費も随分かかってるんだろうしねぇ・・・。
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