<除染費用は賠償の対象外?>東京電力が放射能対策費用の全額賠償に応じない理由
水野ゆうき[千葉県我孫子市議会議員]
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東京電力の福島第一原子力発電所における事故に伴い、これまで原発に関係のなかった地域までもが汚染され、放射能対策に追われた。筆者の住む千葉県我孫子市でも放射能対策は最重要課題である。市では放射能対策室を設置し、学校や公園、住宅等の除染作業がひっきりなしに続いている。
放射能対策にかかる費用は甚大であり、その原因者として原子力政策を推し進めてきた国と東京電力に、市は損害賠償請求をしている。しかしながら、東京電力は放射能対策にかかった人件費と除染費を賠償の対象外とし、本市の請求分全額を支払っていない。
まず、対象範囲を事故原因者自らが決めていることが世間一般の常識とはかい離している。メーカーが不良品を出せば回収し、新品に交換したり返金するということは当たり前のことである。それは競争原理が働き、対応をしなければ信頼は失墜し、最終的に会社は倒産に追い込まれるからだ。しかし、今回の対応を見る限り、その危機感が東京電力にはないと言わざるを得ない。
事故がなければ全く不要であった経費であるにも関わらず、支払いに応じないこの不誠実な対応に関し、筆者は市議会内において、市として東京電力に対して提訴も含めて考えていくべきだと主張した。
もちろん、現在は本来支払われるべき費用を「市民の税金」で「立て替え」ている状態となっている。
未払い分の支払いに応じない東京電力に対し市単独での抗議では行き詰まり、千葉県及び県内の他市等と連携し、9月12日に東京電力に質問状を提出した。千葉県でとりまとめたわけだが、驚いたことに県内だけで23団体(千葉県及び我孫子市を含む県内22市等)にのぼった。これだけの基礎自治体等が東京電力との折衝に苦慮しているのだ。
東京電力に支払いを求める必要性と提訴ということを筆者が発言した際に、筆者に対する批判的な意見も散見された。しかし、これは原発の是非についての議論ではない、ということを忘れてはならない。
過失によって生じた費用を被害者が原因者に求めること。これは私生活でもありふれている、ごくあたりまえのことだ。離婚や交通事故等、様々な問題で発生した費用の支払いを要求したり、両者の合意形成ができなかった場合の解決手段としての裁判利用も当然のことだ。
原発推進派は「東京電力」「原発」といった言葉だけ過敏に反応するのではなく、中身の議論を見るべきではないだろうか。
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