<拡がり続ける「擬人化」ブーム>ラーメンや自動車までもが美少女キャラに擬人化

デジタル・IT

岩崎未都里[ブロガー]
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福島県のある「個性的なラーメン店」で2年ほど前から摩訶不思議な現象が起きております。それは、ラーメンを萌え系美少女として擬人化しているのです。その名も「福島ラーメン組っ!獅子奮迅隊」。
各ラーメン店とメニューの特長を的確に捉え、アニメ絵の美少女キャラクター化したものを公式認定しているのです。筆者はキャラモノは「ゆるキャラ」が定番と考えてましたが、今や、あらゆるモノや概念を、二次元系美少女・美少年に見立てる「萌え擬人化」こそが、アニメ・コミック業界の間では定番の手法となっています。
現在、「擬人化」現象に目を付けた様々な企業が、プロモーションのツールに「擬人化」を取り入れ、消費者層の拡大や掘り起こしに挑戦し、いくつもの成功事例があるようです。
例えば、自動車を擬人化したスマホゲーム「車なごコレクション」。「車なご」=「車+女(おなご)」、国産車メーカー人気車が、美少女キャラに擬人化です。
ホンダのフィットちゃんなど「初めまして! みんなのアイドル、フィットです!」と身近なアイドル風なのに対し、日産のLEAFちゃんになると「いいか、充電プラグはゆっくり挿すんだぞ!」と、上から目線のツンデレキャラでEV(電気自動車)らしさが出てますね。車好きな筆者は、ガテン系女子のTOYOTAハイエースちゃんや、スポーツ万能女子のGT-Rちゃん、など妄想し出すと止まりません。
擬人化コンテンツで、男性の人気No.1と言えば、艦船を擬人化した娘=「艦娘(かんむす)」のキャラクターを利用したDMM.comオンラインゲームの「艦隊これくしょん-艦これ-」でしょう。2014年6月までに70億円の利益をあげていると言います。実在の艦船の名前を付けられた艦娘たちは、駆逐艦は小柄でスレンダー、重巡洋艦は巨乳でグラマーなど、特徴を捉えた絵柄、史実に沿った性格や運命など、マニアックなこだわりです。
ゲーム以外にも、その経済効果は及んでいます。艦船模型の売上げが、秋葉原の模型店で前年比10倍に跳ね上がったとのこと。メーカーも「生産が追いつかない」嬉しい悲鳴状態の「萌え擬人化」特需と言えます。
女性に大人気なのは、刀剣を擬人化した美男子キャラクターを育成しながら戦いを繰り広げるオンラインゲーム「刀剣乱舞」です。ユーザー数は50万人を突破しています。
登場する美男子キャラクターの中でも一番人気は「鯰尾藤四郎(なまずお・とうしろう)」。この「鯰尾藤四郎」は豊臣秀頼が愛蔵していた刀が大坂夏の陣で大坂城とともに焼けたものを、家康が脇差として打ち直させたもので、形がナマズの尾に似ていることから命名された名刀です。設定が細かいですよね。
キャラ設定も意外に史実に沿って「主と共に焼かれてしまったことで一部記憶を失っているが、過去は振り返らない、まっすぐな性格をしている」。そして脇差だけに小柄な美少年という設定です。この美形要素+悲劇的な運命が、腐女子・暦女のハートを鷲掴みにしているわけです。
擬人化の影響で「鯰尾藤四郎」を収蔵している名古屋市の徳川美術館の来場者数が倍増していると言います。この徳川美術館、そもそも「鯰尾藤四郎」は未公開でした。それが「刀剣乱舞」人気から「本物が見たい」と女性ファンが殺到したことで、当初予定していた今夏の「家康の企画展」での公開を、急きょ前倒して公開することになったようです。
同館のFacebookの閲覧数はこれまでの4~5倍の約1万5000件越えとなっています。公開初日は平日の朝から多くの20代女性らが多数来館となりました。ゲーム、コミック、キャラグッズのみならず、擬人化は徳川美術館にでも経済効果を及ぼしていることがわかります。
筆者が、この擬人化ムーブメントを俯瞰してみて気付いたのは、ヒットしている「萌え擬人化キャラクター」の共通項が3つあることです。

  1. 擬人化する際の拠り所となる特徴的なスペックがあること
  2. 描き手がキャラクターに対して強い愛情ゆえのこだわりを持っていること
  3. 可愛いだけではなく、悲劇的なエピソードやトラウマなどストーリーを抱えていること

この、複雑難解なキャラ設定を、こだわりを持って魅力的に表現できる作り手と、それを瞬時に理解する観手(みて)。この成熟した関係は日本以外には存在しないのではないでしょうか。
アニメの語源はアニミズムであり、日本では古来から森羅万象すべてのものに神が宿る(アニミズム)と考えられてきたことから、筆者は、日本人は歴史的にも擬人化キャラクターを読み解く能力が際立って高いようにも思います。アニメ先進国の日本は擬人化の先進国でもあり、この分野では世界トップを独占中であることは言うまでもありません。
現在、東京MXで放送中の「艦これ」も好調。このまま映画・ドラマ化もあるかもしれません。「萌え擬人化」は何処までも拡がり、今後が楽しみであります。
 
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