全編「27時間テレビ」の番宣だった「めちゃイケ」が素人のダンスをメインコンテンツにする愚策


高橋維新[弁護士]

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2015年7月4日放映のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!」(以下、めちゃイケ)は全編が「27時間テレビ」の「番宣」(番組宣伝)であった。メインの企画は「27時間テレビ」の1コーナー「ちびっこホンキーダンス選手権」の頭出しである。

「ちびっこホンキーダンス選手権」は、日本全国のダンスが巧いちびっこにダンスを披露してもらい、そのNo.1を決めるという趣旨の企画である。ちびっこなので(一部セミプロのような巧者も集まってはいたが)、基本的には素人である。

そうなると、まずダンスというエンターテインメントについて論じる必要がある。

結論から言えば、ダンスは、単体では全くテレビ向きではないエンターテインメントである。筆者は「27時間テレビ」の1コーナーにダンスメインの企画を据えたことが正気の沙汰とは思えない。

エンターテインメントは、参加型と鑑賞型に分けられる。意味は読んで字のごとくであるが、ダンスは参加型のエンターテインメントとしてはとても優れている。ダンサーと一緒になって踊れば、単純に楽しい。

そして、なぜ参加型のエンターテインメントとして優れているかといえば、やはり「自分にもできそうな動き」をやってくれるからである。実際にやってみると全然思い通りに体が動かないのではあるが、それは別の話である。ダンスは、一見した段階では意外とできそうで、参加への敷居が低いのである。

それゆえに、鑑賞型のエンターテインメントとしては一定の限界がある。「できそうな動き」をするので、見てもあまりすごいと思えないのである。「自分にとてもできなさそうなすごい動き」をやってくれるエンターテインメントなら、サーカスや雑技団の方がよっぽど派手なことをやっている。

ところがダンスでは、サーカスほど高くも飛ばなければ、雑技団ほど人間離れした柔軟さを見せるわけでもない。だから、ダンス単体を見ただけでは、それほどの感動も驚きも呼び起こさない。

ダンスが鑑賞型のエンターテインメントに回るのは、あくまで添え物としてである。主役の歌にダンスを添えれば歌謡ショーになる。ダンスと歌をもっと(切り分けが難しいほどに)混ぜるとミュージカルになる。ここでは主役は歌であって、ダンスは単なる賑やかしでしかない。

ダンスが鑑賞型のエンターテインメントとしてメインを張れるとすれば、「驚き」や「感動」ではなく、「笑い」を主眼に置いた場合である。

岡村やガレッジセールのゴリのような「フラ」(笑いの対象になるような、外見が放つ面白みや明白な特徴)持ちが踊ればおもしろい。敢えて失敗や動きのズレを入れたりしてもいい。今回の出場者だと、例えば、ステップに合わせて地面に置いたうどんの生地を踏んでいたチームが「ファニー」なダンスを志向していたと言える。

このようなファニーを入れずに、感動や驚きのみで勝負すると、ダンスは単体では(参加型はともかく)鑑賞型のメインは張れない。そして、テレビは優れて鑑賞型のエンターテインメントである。舞台のように客が演者と空気を共有しているわけではないので、参加がしづらい。テレビのある部屋でドタバタ踊るわけにはいかない人も多いだろう。

だから、テレビでダンスをメインコンテンツとするのは愚策以外の何物でもない。

ここには、今回も出てきたEXILEと所属事務所のLDHの意図を感じずにはいられない。前述の通り、ダンスというのはエンターテインメントの世界では基本的に添え物なので、ダンサーという職業も、演者の中では地位もギャランティーも低かった。

これは筆者の推測に過ぎないが、HIROがEXILEとLDHというものを立ち上げた動機には、彼自身ダンサーとして色々と不遇な扱いを受けてきた経験から、ダンサーを低く見る業界の態勢を変革し、その地位をもっと向上させたいという思惑があったのではないだろうか。

それゆえ、EXILEは単なる踊り手に「パフォーマー」という新たな名前を付け、それまで業界で主役を張っていた「歌い手」(EXILEではATSUSHIとTAKAHIROが筆頭である)と同等の待遇を与えたのである。今回のちびっこホンキーダンス選手権も、「27時間テレビ」の1企画としてダンスを正面から扱うことで、テレビにおけるダンスとダンサーの扱いを向上させたいというHIROの思惑が透けて見えるのである。

ただ、ダンスの中身が前述したものでしかない以上、それに実力以上の待遇を与えるのは基本的に間違いである。ダンスの扱いを向上させたいのだったら、テレビなどという旧来のメディアに頼らず、参加型としての長所をもっと全面に押し出した方が賢明であると思われる。

さて、「めちゃイケ」もダンスでは絵面が持たないということは分かっているので、今回の放送でも色々な角度からファニーを足していた。ちびっこ・保護者・ダンスの先生などのおもしろい素人をいじってみたり、岡村のおもしろい動きとコラボさせてみたり、音響さんのヘタクソさをいじってみたり、加藤に「一輪車はダンスじゃない」と物言いをつけさせてみたり、素直にダンスをさせてみなかったり。

それ自体は「めちゃイケ」の得意とするところなので良いのだが、今回の「ちびっこホンキーダンス選手権」で見るべきところを全て出してしまったことになるのが問題である。

ちびっこのダンス自体は全てダイジェストだったので、その本番を「27時間テレビ」にとっておいたつもりなのだろうが、前述の通りダンスそれ自体はテレビで見てもさほどおもしろいわけではない。おもしろいところがあるとすれば前述のファニーの部分なのだが、この「上澄み」を今回の放送で全て出してしまったので、「27時間テレビ」の本番で見るべき映像がなくなってしまった。

多分、同じような形でもう1回ファニーをやるのだろうが、生放送のうえ素人なので、編集がされていた今回以上にはうまくいかないだろうし、何より同じものをもう1回やるなど視聴者をナメるも甚だしい。

こういう形で素人批判をすると、「素人なのだからそんなに言うと可哀想だ」という反論をしてくる人がいるが、あくまで素人を使ったスタッフと番組への文句である。素人も、一定の水準以上に達していないからには画面に出してはいけないし、出てこないでほしい。テレビは、そんな生半可なモノづくりではない。

製作者がどういうつもりなのか知らないが、いずれにせよ本放送が楽しみである。まあ、おもしろくないので、筆者は多分見ないだろうが。

 

<追伸>
矢部は終始声がひどかった。矢部が声をつぶしたことは岡村も今回より前に放映されたオールナイトニッポンで指摘していたのだが、聞けばすぐ分かるひどさだったので、番組としていじってやった方がまだ救われたと思う。

最後に、番組の一番最後に出てきた寺田くんは、非常に達者だったのでもっと長いこと岡村と絡ませてみたい。

 

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。