<フジ「ENGEIグランドスラム」>ナイナイはMCとしての仕事が「あの程度」ならネタをやるべきだ


高橋維新[弁護士]

***

2015年7月12日放映のフジテレビ「ENGEIグランドスラム」について論じてみたい。

【1】全体の演出面

前回の放映につき筆者が指摘した問題点(フジテレビ「ENGEIグランドスラム」の無駄遣い http://mediagong.jp/?p=9977)は以下の6点である。

  1. 既出ネタの使い回しが多い
  2. ナインティナインがネタをやっていない
  3. ナインティナインが芸人と絡まず、合間合間のコメントもほとんど使われていないので、司会としている意味がない
  4. 観客が入っている(ので収録の終了時間を配慮する必要があり、ナインティナインと長いこと絡ませることができない)
  5. ネタについて番組やスタッフが事前に口を出してブラッシュアップしている形跡がない
  6. 芸人のネタ部分はほとんど編集されておらず、垂れ流しになっている

今回、多少なりとも改善があったのは1.ぐらいなので、前回からほとんど進歩がない。9月に第3回の放送が決まっているということなので、今のままである程度数字がとれているのだろうが、ここに書いてあることを全て改善すれば確実におもしろくなるのだから、次はなんとかしてほしい。

ちなみに、5.に関してはやりすぎると「芸人の作家性をつぶしている」という批判を受ける。例えば日本テレビ「エンタの神様」は番組側からの口出しの程度が強く、というより番組がネタのフォーマットを作って芸人にやらせていたので、その点を批判されてもいた。

ただ、これは全く当たらない批判であると考える。テレビは、視聴者を喜ばすためのものであり、プロの芸人も客を楽しませるための存在である。決してテメエの好きなことができる媒体ではないのである。客を楽しませるためだったら、一芸人の作家性などクソ喰らえである。

単に表現がしたいんだったら、今はもうインターネットというものもあるのだから、自分で撮った動画を上げればよい。テレビで売れたいのだったら、自分は殺すことを覚悟しないとダメである。まあ、たまに好き勝手やっているのにそれが客にもウケる「作家」もいるのだが、そういうのはごくわずかの例外である。そういう例外を見て勘違いをしてはいけない。

【2】出場者寸評

1.タカアンドトシ

見たことあるネタ。タカのデブの「フラ」(笑いの対象になるような、外見が放つ面白みや明白な特徴)がよく活きている。ただトシのツッコミがいつもヒステリー過ぎるように感じてしまうので、もう少しタカに優しく接してほしい。

2.チュートリアル

いいんじゃない? おもしろかったので特に文句はない。福田は芸無しでテレビでは扱いにくい芸人なのだが、それはネタへの文句ではない。

3.ますだおかだ

前半は色々な日本語を英語にしてみるというネタで、後半は「USJにこんなアトラクションがあったらいやだ」というネタだった。

なんというか、全体的にしょうもなかった。筆者は、増田がこのコンビのボケだというのは初めて知ったのだが、岡田のスベリキャラの方がテレビでは定着しているから、増田がボケているのを見るとなんか無理している感じがして痛々しい。

岡田は、「シルベスター住宅ローン」が無視されてスベらされていたのがスベリキャラの面目躍如であった。あれは、きちんと増田がツッコめばある程度の笑いは起きるはずである。ツッコまないからスベっているのだが、当然、わざとである。

4.テツandトモ

えらく営業慣れしている感じは伝わってくるが、動きで笑いをとるのは歳をとると肉体的にも辛くなるし、見ている方としても精神的に辛くなるので、いつか新しいのを見つけた方がいいと思う。「笑わず嫌い」の時みたいに、同じ動きを強みとしている岡村と絡めば絶対におもしろくなるのに、それができていないのがこの番組の問題なのである。

5.COWCOW

好きである。多田は顔芸ができる。2人とも(ピンでR-1に出場経験もあることからすれば)ネタを考えられる。きちんと実力がある。ずっと「売れかけ」なのが不思議である。

6.流れ星

「ざ・ぼんち」に似ている感じがしたのは、ちゅうえいの負担が極端に大きいからだろう。ツッコミの瀧上は、あんまり笑いながらツッコまない方がいいと思う。瀧上がヘラヘラしていると、ちゅうえいがわざとボケているのだということが観客に伝わってしまい、ハードルが上がってしまう。真顔を維持できないとすれば、それが瀧上の能力の限界である。

観客のハードルを上げてしまうので笑っちゃダメだというのはちゅうえいにも共通しているのだが、ちゅうえいはずっと真顔でボケ続けることができている。

ただ今回、ちゅうえいも傘地蔵の「レーザービーム」という技をやるときに笑ってしまっていた。瀧上がこの点をツッコめていたので、「おっ」と思ったのだが、その後ちゅうえいのギャグにつながっていたので、多分ちゅうえいが笑ったのもハプニングではなくて台本通りなのだろう。やっぱりあれが瀧上の能力の限界だろう。

7.NON STYLE

井上の「ボケ多いわ」というツッコミが一番おもしろかった。本筋として冒頭に設定された「熱血教師」というコントには全く入れていなかったが、それがお笑いである

石田のボケの感じが癪に障るというのは前回指摘した通りだが、これで売れているのだから、まあ好みの問題なんだろう。

8.シソンヌ

見たことある。しかし、いいと思う。

後半には「横になっちゃう」とか「クセになっちゃう」とかパターンを変えていたので、「変な人」と「好きになっちゃう」というフレーズだけでごり押ししているわけではなく、きちんと中身が考えられている。

9.トレンディエンジェル

ハゲの「フラ」を押し過ぎなので、もっとこのフラが「自然」に生きる内容にしないと客の飽きが早いと思う。「トレンディエンジェル」というコンビ名からしてハゲのフラがあるからこそズレが生まれているので、コンビ名は変えるべきであるし、「お兄さん、トレンディだね。うん、トレンディエンジェル」という冒頭のギャグや「WaT小池徹平君と同じ29歳」というツカミもやめるべきである。全部実現すると全く別物のコンビになりそうだけど。

10.ハマカーン

おもしろいのは浜谷のキレながらのツッコミが素に見えるから。素じゃなかったとしたらちゃんと芝居ができているということである。実力はあるのである。

11.バイきんぐ

以前も指摘したことがあるが、小峠は、キレる芝居がヘタである。浜谷や、トシや、(今回出場していないが)サンドウィッチマンの伊達などと比べても圧倒的に下手である。ここを練習すれば、もっと化けると思う。ホラーと思わせておいてからのオチは良かったので、この台本をスポイルしないような実力を身に付けて欲しい。

12.笑い飯

前回と同じで残念な時の笑い飯。ボケの一つ一つが全部ぶつ切りで、連帯感も統一感も乏しい。

13.千鳥

NON STYLEと同じくシチュエーションコント仕立ての漫才。NON STYLEと比べるとボケの数は少なかったし、質もイマイチだった。

14.柳原可奈子

バブルを引きずっている女子をバカにする一人コント。登場人物は、柳原と、その対面の話し相手と、もう一人フミコさんという人がいたのだが、フミコさんの存在や位置が非常に分かりにくいセットだったので、もう一台机か椅子かを置いておくべきだったと思う。

柳原の顔は、他のブスが売り物の女芸人と比べると小ぎれいなので、「勘違い発言」がマジで鼻についてしまうことがあるのが難点か。

15.おぎやはぎ

文句なし。矢作の冷静で優しいツッコミは、他のグループに見られたキレ気味のツッコミとは一線を画しており、小木の天然っぽそうなボケ具合に合っている。

16.博多華丸・大吉

やっぱり、筆者にはあまりハマらない。だから公正な論評ができない。

17.渡辺直美

くどい。ずっとデブのブサイクがキレのあるダンスをしているというズレ1本でゴリ押ししてくるため、こちらの飽きが早い。

18.海原やすよ・ともこ

スナックのママと女の子の会話みたいだった。うん、まあ、いいんじゃないかな、という感じ。セットのことを「パチンコみたい」とツッコめていたのは流石関西のベテランである。ネタという予定調和をやるに止まらず、こういう笑いがもっと欲しいのである。

19.東京03

今回のコントは非常におもしろい。

20.矢野・兵動

前回と同じく兵動が街で見た変な人のことを話すというネタだった。そして「兵動のすべらない話」として矢野抜きで成立しているというのも前回と同様だった。矢野が要らないというのは、兵動が話のオチを言った時点で笑いが起きていることからしても明らかである。矢野のツッコミが必要だったら、兵動がしゃべったオチに矢野がツッコんでからじゃないと笑いが起きないはずである。

むしろ、矢野のしょうもない相槌は邪魔くさい域に達していたので、ますますどうしようかねえ。

21.桂三度

既存のお話を要約して伝えるというネタであり、このコンセプト自体は散々使われている古臭いものである。ここで笑いを呼び起こすズレは、「え〜今ので終わりかよ! 略しすぎだろ!」というものなのであるが、話の終わり目が客に分からないとこのズレが伝わらないので、何らかの工夫が必要である

ただ三度は「終わりです」とストレートに言うことで話の終わり目を客に伝えていたので、良くなかった。なんかもっと言外の手段にしないと、見ている方のハードルが上がってしまう。

22.中川家

礼二は髪が減ったなあ。普通におもしろかったが、それに甘んじてはダメである。中川家に期待するのはもっと高いレベルである。

23.爆笑問題

ネタにしている話題は時事から拾ってきているが、各々を組み合わせただけであり非常に断片的だった。太田のブラックさは前回より出ていたが、台本自体はもっと練ってボケの間の相互作用を深めることができるはずである。

【3】最後に

以前にも書いたことがあるが、ナインティナインもMCとしての仕事があの程度なら、ネタをやるべきである。ナイナイの漫才はちゃんと見たことはないが、一定程度のおもしろさはあるはずである。スベったらスベった「MCが一番ウケないってどういうこと?」とツッコめばどうにかなるので、やって絶対に損はない。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.
高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。