<視聴者参加型番組で視聴者は増やせない>NHK・Eテレの子ども向け投稿番組「ビットワールド」を批評する


高橋維新[弁護士]

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筆者は弁護士業の傍ら、「アメトーーク」などのバラエティ番組の批評を執筆している(http://www.mediagogn.jp)。

そんな筆者の元に、「NHK・Eテレで毎週金曜日18時20分から放映されている『ビットワールド』の批評してほしい」という奇特なメールが来た。

メールに送り主本人の情報は全く書かれていなかったので、この方がどういう属性の方なのかは分からない。「ビットワールド」のファンなのか、はたまたビットワールドを叩いてほしいのかも分からない。

ただ、筆者宛に批評を依頼してきたということは、ボロクソに言われることも期待してのことだろうと判断し、早速2015年9月18日に放映された回を視聴した。

ところが予想に反して、これがなかなかいい番組であった・・・と書きたいところであるが、そうはならなかった。よって、以下に書く内容は「ビットワールド」を褒める内容にはならない。当初の予想通りボロクソに言わせてもらうことにする。

「ビットワールド」という番組には、いくつかのコーナーがあり、コーナーごとに視聴者からの投稿を募集して、それを紹介するという内容がメインになっている。視聴者参加型の大喜利番組と考えると最も分かりやすい。

そして、Eテレで平日の18時20分という時間枠で放映されていることから分かる通り、メインのターゲットは子供である。

ひとつ前の枠で放映されているのがアニメ「忍たま乱太郎」であり、違う曜日には同じ枠で「天才てれびくん」が放映されていることからも、ターゲットが子供というのは明らかである。投稿されてくるイラストの画力などを見ても、かなり小さい子供までこの番組を楽しんでいることが分かる。

子供向けなので、大人の筆者がこれを見ておもしろく感じられるかどうかを論じても意味がない。ただ、こういう言い方をしているということは、大人の筆者が見たらおもしろくはないということではある。

子供向けなので全体的には一定の分かりやすさが重視されており、分かりやすさを守るために「破調」も嫌われる。出演者の中にはバカリズムがいるが、実力派の彼も忠実に台本を守っているので、見ていて可哀想になってくるというのは「LIFE」の田中や塚地と一緒である(http://mediagong.jp/?p=11720)。

何はともあれ、この番組の一番の特徴は、前述の「視聴者からの投稿をメインに構成している」という部分である。視聴者投稿が主役になっていた番組で思い出されるのは「ボキャブラ天国」(フジテレビ・1992〜2008)であるが、今はその人気も昔日の話である。最近は、視聴者投稿がメインの番組はすっかり下火になっているというのが筆者の印象である。

なぜか。

視聴者投稿を紹介する番組の常として、「本当に視聴者投稿で成り立っているのかがよく分からない」ということが言える。

視聴者というのは、基本的に素人なので、放っておくと番組がおもしろくなるような投稿ばかりをしてくるわけではない。視聴者からの投稿やハガキだと嘘をついて、実際は放送作家というプロが中身を書いているというのはテレビの業界では非常によくある話である。こういうことが横行しているということは、「視聴者に任せた方がおもしろくなる」というのは、確実に嘘なのである。

では視聴者参加型の番組の強みとは何なのか。「参加する楽しみ」というのは一つ考えられるが、当然投稿が採用されないとおもしろみは生まれない。これは「ファミ通町内会」に今も投稿をしている筆者が言うのだから間違いはない。

そして、当然ながら、実際に採用される投稿は、番組をおもしろくしてくれる人たちのものに偏る。プロ、あるいはプロに準じるセンスと実力を持った「常連」たちで採用枠の大部分は埋め尽くされるのである。結局、「参加の楽しみ」も数としては僅かな常連たちしか享受することができない。

つまり、「視聴者参加型」という形をとったところで、番組を見てくれる人の数は増やせないのである。視聴者におもしろい投稿を期待してもなかなかうまくはいかないし、「参加の楽しみ」は僅かな人にしか行き渡らない。

結局、視聴者参加型のコーナーで生き残っていくのは、実力派の「常連」が複数集まる僅かな番組になる。それがラジオであれば「岡村隆史のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)や「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ)であったり、雑誌で言えば週刊SPAの「バカはサイレンで泣く」であったり(手前味噌ながら)「ファミ通町内会」(週刊ファミ通)だったりするのである。

ただ、全てにおいて共通する問題点として、コーナーに長く居座る常連たちに全体の空気感が支配されることになるため、閉塞的で内輪感が強く、小さくまとまりがちになってしまうということが指摘できる。

つまり、何にせよ、視聴者(あるいは読者)参加型という形態では「大」ヒットは望めないというのが今のところの筆者の所感である。

「ビットワールド」も、もっと大きく羽ばたきたいのだったら、何のメリットも生まない「視聴者参加型」というシステムを切り捨てた方がいいと思う。このシステムは番組の根幹を成しているので、それを切り捨てろというのは番組をやめろと言っているに等しいが、どうも筆者の考えるところを突き詰めるとそのような結論にしかならない。

ただ、この番組が対象にしている「子供」に関しては、ただ単に投稿ができるだけで(それが採用されなくても)楽しく感じてくれるのかもしれない。だから番組もこういうシステムをとっているのかもしれない。そのあたりは、筆者にはよく分からない。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。