<海上自衛隊トップ・元海将が説明>平和安全法制の可決で「できるようになった2つのこと」とは?


伊藤俊幸[元・海上自衛隊 海将]

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筆者は元・海上自衛隊のトップとして、これまで平和安全法制に関する論点をわかりやすく解説してきました。(http://mediagong.jp/?author=229)本稿では「我が国周辺における紛争生起の蓋然性は低下する」ということについて説明してみたいと思います。

平和安全法制が可決され、これにより、元海上自衛隊幹部として私は大きく二つのことができるようになったと考えています。

その一つは、「日米同盟を中軸とする抑止力が更に高まり、現状変更を企図する意思を挫くことができる」です。具体的には、海自艦艇は平素から他国艦艇とパトロールできるようになったということです。

米軍や豪州といった同盟国や友好国海軍艦艇とともに平素から実効性あるISR(情報収集、警戒監視、偵察活動)ができる。そして、もしパトロール中に不測事態が起きた場合は、「存立危機事態」認定による相手国軍艦等の「排除」や「武器等防護のための武器使用」による相手国船舶等の「行動の停止」ができます。

これまでのように米艦艇と共同訓練をしていても、「一緒にいるけど自衛隊は何もできない」と相手から見下されることがなくなります。

また例えば日米韓や日米豪といったこれまで日本以外の国は当然可能であった三カ国以上の艦艇との海上パトロールも可能になります。このように平素から日本周辺で他国と行動を共にできることは、多くの友好国と情報交換が可能となり、信頼関係が更に高まり、相手に対しては、その揺るぎない関係を見せつけることができるようになるのです。「存立危機事態」の設定がこれを可能にするのです。

また米軍にしか支援できなかった「周辺事態法」を「重要影響事態安全確保法」に改正することで、国連軍として朝鮮戦争に参加した米国軍以外の外国軍隊に対しても後方支援等の対応措置が可能となります。

更に「治安出動」や海自艦艇等が海上の治安維持にあたる「海上における警備行動」の手続き迅速化が図られることで、これまで以上に海保と海自の関係は強化されることになります。海賊対処活動で、海上保安官に乗艦してもらうよう働いた担当者としてはうれしい限りです。

このように、これまで以上に、グレーゾーン事態から存立危機事態、武力攻撃事態と継ぎ目のない形で日本の安全保障を律する法律が整備されたことで、同盟国や友好国との関係が強化される日本は、現状を変更しようとする国から見ればやりにくくなったとの思いでしょう。

この法案成立に対して明確に批判したのが中国だけで、ベトナムが強く支持する等、アジア太平洋諸国を含む44カ国が支持を表明したことがこれを証明しているのです。

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伊藤俊幸

伊藤俊幸(いとう・としゆき)元海上自衛隊トップ・海将。 昭和33年生まれ。防衛大(機械工学)卒業。筑波大学修士課程修了。海幕防衛部防衛課(平成6)、潜水艦あらしお副長兼航海長(平成8)、潜水艦はやしお艦長(平成9)、外務事務官(平成11)、第2潜水隊司令(平成14)、海幕監理部総務課広報室長(平成15)、海幕指揮通信・情報部情報課長(平成18)、情報本部 運用支援担当情報官(平成21)、海幕指揮通信・情報部長(平成22)、海上自衛隊 第2術科学校長(平成23)、統合幕僚学校長(平成25)を経て。平成26年、呉地方総監。平成27年退職。