[茂木健一郎]<日本の成長戦略には変人が必要>現代の経済成長が「変人」によって促進されている事実


茂木健一郎[脳科学者]

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「成長戦略」という言葉が、ふたたびメディアを賑わせるようになった。現代における成長戦略は、政府がトップダウンでつくる時代ではなく、むしろ一人ひとりが、勝手にやるものではないか。

政府はその邪魔をしない。もっとも、このシナリオが成立するには、自由の精神が社会になければならない。

ぼくが分水嶺だと思うことがいくつかあって、一つはリスクをとることに対する態度だが、もうひとつは、非典型的な人がいた時に、それをいいと思うか、悪いと思うかということ。

たとえば山本太郎さんはかなり非典型的な人だが、彼をいいと思うか、それとも悪いと思うか。現代の経済成長が、変人によって促進されているのは疑いようもない事実である。

ジョブズさんは人のアイデアを自分のアイデアとして吹聴したりとかなり困った人だし、ザッカーバーグさんは一部から批判されてもずっとフーディー姿をやめない。変人の自由がないと、経済成長は図れない。

それで、ふと蘇ってきたのが、成城学園前のレモンスタジオで収録されたある番組のことである。

たしか、何か主張して、パネラーが賛否を表明するという形式で、ぼくは「変人の自由」が大切だとプレゼンした。パネラーの中には、Shellyさんがいた。

ぼくは、ふだんから変人推しだし、その番組のパネラーたちも変人だとぼくは思っていたから、当然、みんな賛同してくれるものと思っていたら、結果はびっくり。

ぼくに賛同してくれたのはShellyさんだけで、あとの人は、「変人がいたら世の中が乱れる」みたいなことを言って、総反対だった。ぼくはあまりにもびっくりして、砧のそのスタジオから、新宿まで、2時間30分くらいかけて歩いたのだった。もうあたりは真っ暗で、小田急線の駅がときどき明るくぱっと出て、また消えていった。

へえ〜、みんな、変人が嫌いなんだ、と心の底から驚いていて、そのショックから立ち直るのが大変だった。

変人に対する異論は、一見、正統的な顔をしている。至極ごもっとも、社会の秩序や、良識や、「普通」のふるまいから見たら、おかしい、というような同化圧力がないと、社会の平穏が保てない、と信じる人たちがいる。

日本は、そのような人たちが、比較的割合が多いようだ。そのテレビのパネラーの方々も、一人ひとりを見たら変人に見えるのだけれども、地上波テレビという、日本の社会の中の「ど真ん中」の番組の文法としては、確かに、変人の自由を主張するぼくの話を全否定した方が、バランスもいいし、視聴者受けもいいのだろう。味方はShelly一人だった。

そんな、トラウマ経験を、山本太郎さんに議長さんが厳重注意して、次は議員除名だぞ、とおっしゃったというニュースで思い出した。

ぼくは、山本太郎さんはいいと思う。しかし、少数派だということはわかっている。

日本の成長戦略には変人が必要である。しかし、日本は変人を容易に許容しないようだ。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。