<バラエティのクオリティ>アメトーーク「ついつい食べ過ぎちゃう芸人」で見せたスタッフと芸人の「完璧な仕事」


高橋維新[弁護士]

***

2015年10月15日放映のテレビ朝日「アメトーーク」のテーマは「ついつい食べ過ぎちゃう芸人」である。体に悪いことは分かっていても目の前に食べ物があると手が伸びてしまう、時には自分で買いに行ってさえしまう芸人たちがその悲哀をしゃべる回であり、「何かをバカにする回」に当たる(http://mediagong.jp/?p=8317)。

ひな壇には「食べ過ぎちゃう芸人」の面々。司会の横に、食べ過ぎちゃう芸人にツッコみ、食べ過ぎちゃう芸人と喧嘩をする役目のアンジャッシュ・渡部。

今回は、<良くない回の「アメトーーク」>のように個々の面白エピソードが積み上げられていくだけではなかった。エピソードがひとつ披露されるたびに他の食べ過ぎちゃう芸人が乗っかったり、宮迫や渡部がツッコミを入れたり、渡部のツッコミに食べ過ぎちゃう芸人の方が逆切れしてケンカが始まったりと、芸人同士の有機的な絡みが見られたおもしろい回だった。

毎回このクオリティを維持して欲しいものである。もう一度言うが、毎回このクオリティを維持して欲しいものである。

「何かをバカにする」テーマ設定、テーマに合わせた芸人たち(渡部のようなツッコミ役も含む)の人選、個々のエピソードの聞き出し、そしてそれを大まかにどういう順番で話してもらうかを決めて芸人たちに(打ち合わせで)伝えた時点で、スタッフの仕事は終了する。あとはその舞台をどう転がすかはカメラの前の芸人にしかどうにかできないことである。

無論、スタッフのお膳立てがとっ散らかっていて芸人がいくら頑張ってもどうにもならない場合(典型的には、企業とのタイアップが感じられるような「何かを褒める回」の数々)もある。

もちろん、スタッフがきちんとおもしろくなりそうな舞台をお膳立てしたのに、芸人たちのパフォーマンスが期待外れだったせいでおもしろくならない場合もある(http://mediagong.jp/?p=12276)。

今回は、スタッフの仕事は完璧で、芸人の仕事も完璧だった。だからおもしろかったのである。しつこく言うが、毎回このクオリティを維持して欲しいものである。

さて、各芸人の採点をしてみたい。5点満点である。

【小杉竜一】(ブラックマヨネーズ)4.5点

MVP。紛うことなきMVP。

食べ過ぎちゃう芸人としての個々のエピソードも粒揃いで、他の芸人への乗っかり、渡部のツッコミへの対応も素晴らしかった。食べ過ぎちゃう芸人が振りかざす「食べ過ぎてもいい」論理は基本的におかしなものばかりなので、渡部から「それはおかしい」と正論で追及されると、ともすれば反論に窮しがちなのであるが、小杉の場合しっかりおかしな論理を貫き通して喧嘩できていたし、言葉が出てこない場合も顔芸でなんとかつなぎとめられていた。

彼の一日に密着したVTRやトーク収録後のケータリングでの食べ過ぎちゃう芸人っぷりの期待を裏切っていない。ちなみにVTRに出てきた相方の吉田が一言おもしろいツッコミをしていたので、2.7点をつける。

【伊達みきお】(サンドウィッチマン)4.2点

小杉に次ぐ活躍。今回に限って言えばガヤ王の藤本よりも動けていたと筆者は感じた。「波風立たせたくない芸人」での大人しさが嘘のようである。

欲を言えば、今回の伊達はほとんど「食べ過ぎちゃう芸人」としてボケに回っていたので、普段のパワフルなツッコミを今回のガヤの水準で発揮してほしいものである。

【江上敬子】(ニッチェ)3.6点

やはり他の芸人への乗っかりは高水準。渡部ともっと喧嘩できればもう少し点が増えたが、普段の回なら十分及第点のレベル。

【藤本敏史】(FUJIWARA)4.1点

流石のガヤ王であり、普段通りの動き。ただ普段通りの動きしかできていないということでもあり、「食べ過ぎちゃう芸人」として大きな説得力のある見た目の小杉と伊達には全ての面で一歩ずつ及ばない。

「食べ過ぎちゃう芸人」としてのおもしろエピソードも、「食べ過ぎちゃう芸人」のおかしな論理も、渡部に対する逆切れも、明確に太ましい2人がやった方がおもしろいのである。フラの差である。

そして、それは挙動でどうにかできない見た目の問題なので、どうしようもない。

【バービー】(フォーリンラブ)2.9点

唯一印象に残ったのは「食事はSEXと一緒」という話をしだしたところだったが、その内容自体もクエスチョンマークだらけだったので、「性欲が強い」という自分のキャラクターに落とし込もうとし過ぎて失敗していた感がある。

もっとテーマの「食べ過ぎちゃう芸人」に全面的に乗っかった方が前に出られたと思う。

【斉藤慎二】(ジャングルポケット)3.2点

江上の下位互換の感じ。

【宮迫博之】(雨上がり決死隊)3.4点

自分も食べ過ぎちゃう芸人だと言っていたが、MCとしての立場を守ったのか少し大人しかった印象。もっと食べ過ぎちゃう芸人に加担して渡部と喧嘩した方がおもしろくなった感じはする。

【蛍原徹】(雨上がり決死隊)1.0点

他がおもしろかったのでご祝儀で1点台をあげるが、パフォーマンスは普段と変わらない。つまらない回なら0点台の出来である。

「江上はどうですか」「斉藤はどうですか」という台詞を言っていた記憶しかない。話す順番を指定するだけならPepper君にもできるはずである。

【渡部建】(アンジャッシュ)4.3点

食べ過ぎちゃう芸人に対置される自己管理できる芸人としての登場。自分の役割を正確に理解して、食べ過ぎちゃう芸人の話すおかしな行動やおかしな論理に真っ当なツッコミを入れ続けた。喧嘩もした。宮迫の「明太マヨ」のフリへの対応も相当にこなれている。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.
高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。