めちゃイケ「女性を絶対にオトす方程式」は45歳のナイナイ岡村には酷な企画?


高橋維新[弁護士]

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2015年11月14日放映のフジテレビ「めちゃ×イケてるッ!!」(以下、めちゃイケ)の企画は、モテない独身の岡村隆史(ナインティナイン)が、とある俳優Aから聞いたという「女性を絶対にオトす方程式」を試してみるというものである。

番組の作り自体は往年の「めちゃイケ」によくあった実験企画らしくなっていた。

オンエアでは、偽の打ち合わせに呼び出された女性タレントに岡村が偶然通りかかった体で近付き、その方程式を試す。方程式の中身というのは、「ケチョンケチョンにダメ出しした後に持ち上げる」という古典的な「飴と鞭」の手法である。

岡村が、実際にターゲットの女性タレントに説教をした後、いいところを褒めて、その後、食事や飲みに誘って応じるかどうかを見るという流れである。

女性タレントはドッキリを仕掛けられる恰好になるが、本当にドッキリだったのかどうかは確かなことは分からない。彼女たちにも岡村がそういうことをしてくると知らせたうえでカメラを回した「コント」だったのかもしれないが、全体的にリアクションは自然だったので、その可能性は低いと考えている。

さて、お笑いの企画なので、当然ながら岡村の試みは失敗しなければおもしろくならない。実際にこの方程式が成功してしまっては、何の笑いも生まれない。

「絶対に女性をオトす」はずの方程式を使っているのに女性をオトせていないというズレが、笑いを生むのである。このズレに付随して、「チビでサル顔のおっさんが偶然行き会っただけの女性タレントに説教を始める」「チビでサル顔のおっさんが浅知恵で本気で女性を口説こうとしている」というズレも生まれてくる。

ちょうど、実際にこの方法を使って女性をオトした俳優Aの成功をうらやんで、与太郎(=岡村)がよく考えないままその表層だけを真似した結果失敗するという、落語か寓話の様な構造の回なのである。話の中身としては、「時そば」や「花咲か爺さん」が非常に近い。

この構造の物語においては、ボケははっきりしている。実際の放映でも、おのののかを相手にした際にはおのが思ったより泣き始めて岡村が困惑してしまうという与太郎らしい失敗が展開されていたし、小島瑠璃子を相手にした時は最後に強引に小島を連れて行こうとするボケも見せていた。

特筆すべきは、ダレノガレ明美と対峙した時に岡村が見せた尋常じゃない量の脇汗である。散々説教をした後にこの脇汗をダレノガレに見せてしまい、場が和んでしまうという失敗を岡村がした形になるが、全く予想もしない方向からのボケだったので非常にポイントが高い。

与太郎の失敗のパターンとして通常考えられるのは、「ムチやアメの程度を間違う」「(女性を苦手としているために)ムチやアメの言葉づかいがそもそもヘタクソ」などというものであり、おのや小島を相手にした時の失敗はそういう傾向があった。

しかし、岡村が緊張したために出した脇汗で失敗をもたらすというのは、おそらく誰も予想していなかったパターンではないかと思われる。この奇襲は、オチとしては非常に優れている。偶然だったのであれば、笑いの神様も粋なことをしてくれたものである。

このように、「ボケ」の部分は古典的でもあり非常にしっかりしている。あとは、フリとツッコミでこれを際立たせてやればよい。ツッコミは、岡村をモニタリングしている面々のガヤで基本的には足りていたが、筆者はどうにもフリが甘かったように感じる。

今回のフリとして考えられるのは、2パターンである。

一つには、それこそ「時そば」や「花咲か爺さん」のように、まず成功例を見せてやるという形がある。成功例をまず見せることで、岡村の失敗を際立たせるのである。

ただ、実際にイケメン俳優が女性タレントをドッキリに引っ掛けるというような映像を撮るとなると、尺を使い過ぎてしまう。そこで今回は、再現VTRで俳優Aの手法を紹介するという程度に止めていたが、これだと弱い。

そこで出てくるのが、もう一つのパターンである。岡村に、「この方法なら絶対にオトせる」と自信満々に語らせるというフリである。こちらは、「最初に自信満々に言っていたのに一回も成功していない」という形でズレを際立たせるフリである。

全盛期のめちゃイケなら、例えば「チャラついた格好の岡村が他のメンバーを呼び出してこの方程式を説明する」というような設定でフリのコントを入れてきたと思われる。それこそ、2015年8月29日放映回のような導入である(http://mediagong.jp/?p=11606)。

このような体のコントは「めちゃイケ」も慣れていると思われるので、入れた方が良かったと思うが、なぜか今回はツッコミの面々から映像が始まり、そこに偶然岡村が通りかかるという形になっていた。

岡村は矢部や加藤に言われてこの手法を試すという流れになっていたので、失敗しても「無理やりやらされたから失敗したんだ」という逃げ道ができてしまい、その失敗がズレとして今一つ際立たなかったのである。どうせ導入に小芝居を入れるなら、ここに書いたようなガッツリとしたフリを入れた方がよかったと思うが、不可解である。

あとは45歳にもなったオッサンにこういうことをやらせるのを「みじめだ」と感じてしまう人もいるだろうとは思う。岡村がもっと若いうちにやった方が無難な企画だったのは確かである。

しかし、筆者は、岡村もプロの芸人である以上、どんな形でも笑いを生み出すのが仕事であるため、ちっともみじめだと思う必要はないと考えている。無様なまでに必死な彼を、思う存分笑ってあげて欲しい。

ただ、実際に「みじめだ」「かわいそう」と思ってしまった視聴者(=すなわち、今回の放送を見ても笑えなかった視聴者)がいたとしたら、何らかの対処を考えねばならない。岡村も、過去のめちゃイケで「お笑いはかわいそうと思われたらアカン」と絶叫したことがある。

岡村がみじめに見えるとしたら、必死すぎるように見えるから(=失敗一つ一つのダメージが大きそうに見える)である。それは、岡村が女性関係に慣れていないからそう見えるのであって、もっとチャラついた感じで挑んだ方が見る方も安心して見ていられる。

そこできちんとチャラ男を演じ切って視聴者の心を揺さぶらないように振る舞うのはプロとしての岡村の仕事であるため、もっと稽古をしてほしい。稽古をしても改善ができないとしたら、この企画はやってはいけない。

 

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。