<芸能界から英会話まで>コロナ自粛から「ハイジェニック営業」にシフト

エンタメ・芸能

久松知博[構成作家]

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、我々の生活の至る場面で制約と規制が余儀なくされている。政府によって5月25日午前、北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川の5都道県の緊急事態宣言解除が承認された。4月7日の発令から約1カ月半で一応の解除とはなるわけだが、すぐに元の生活に戻るということは考えにくく、今後も長期的に自粛ムードは継続すると予想されている。

その余波はあらゆる業界に広がっているが、「不用不急の最たるもの」と言われる芸能界へのダメージは甚大だ。舞台やライブ、アイドルのオフ会などの3密に該当するイベントは軒並み中止。活動があらゆる方面で制限されている中、YouTubeや17ライブなど、個で配信することが可能なメディアに活動の場を移しているタレントも少なくない。しかし、従来の営業に比べれば収益は未知数だ。筆者の周りにもオンライン活動に精を出している演者もいるが、結局4月・5月は収入0という芸能人は多い。

一方で、オンラインであることを逆手にとったエンタメビジネスも登場している。例えば、吉本興業の芸人がオンラインスナックのママとなり、少人数でファンと交流できる芸人オンライン飲み会「スナック吉本」は話題になった。

このサービスは吉本興業が運営するクラウドファンディングサイト「SILKHAT(シルクハット)」から購入が可能。5月27日現在でその支援金総額は960万円を超えている。さらに、オンラインお茶会の「純喫茶よしもと」も同時にサービスを開始。こちらは現在270万円超。さすがは吉本・・・と感心してしまう。

このサービスは、今やビジネスの世界でもその名を馳せているお笑いコンビ・キングコングの西野亮廣氏によって提案された。西野氏が吉本興業にアイデアを提案した数日後にはサービスが開始されていたというからその対応の早さにも驚きだ。

このように、ひたすら自粛するという後ろ向きなコロナ対策から、「コロナ禍の真っ最中だからこそ」という逆転の発想で新しいビジネスチャンスへと結びつけている例は、一般企業にも登場しつつある。顧客の健康と安全を最大限に確保しつつ、「今だからこそ」の新しい展開を目指しているケースだ。

例えば、ユニークな動きをしている企業としては、駅前留学でおなじみの英会話教室「NOVA」がある。5月15日から「NOVA」が展開するのは、「NOVAハイジェニック校(https://www.nova.co.jp/lp/hygienic)」という事業だ。英会話教室といえば、オンラインレッスンぐらいしか浮かばないが、一体どんなサービスなのか。

これはひとことで言ってしまえば、「徹底的に新型コロナウイルス対策がなされた次世代型英会話教室」である。つまり、コロナ自粛中でも、英会話はやりたい、だけどオンラインだけじゃなぁ・・・という少々わがままな要求に応えるための「コロナ対策英会話教室」というわけだ。

NOVAでは全校舎でオンラインレッスンを提供しているが、それに加え「NOVAハイジェニック校」では、1限目はオンラインレッスン、2限目は対面レッスンにするなど、顧客の希望する形態で、多様な授業を提供する。対面レッスンでは、全てのレッスンルームに透明の飛沫防止用「ディスタンスパーテーション」を常設、全講師に「除菌ブロッカー」着用、全入室者の検温やマスク着用必須など、合計8つの項目により、極めて高い基準での衛生対策(ハイジェニック)がなされている。

つまり、徹底的にコロナ対策を施した対面環境を作り上げることで、英会話教室を危険な3密空間ではなく、「むしろどこよりも安全な場所」にして、提供しているのだ。確かに、普段の生活空間よりも高い水準のハイジェニック教室の方がはるかに安全。英会話教室の老舗ならでは!さすがの発想である。

これからは、「単にオンライン」「ひたすら自粛」といった方向ではない試みこそが、「withコロナ」時代のビジネスになるはずだ。まだまだ先の見えない自粛ムードの中で活動の制限が余儀なくされている芸能界やサービス業をはじめとしたあらゆる業種の今後の対策にも注目したい。

 

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