300円の不正で解雇される民間企業と「領収書なし、支払先・使途説明なし」でもOKの兵庫県議会


藤沢隆[テレビディレクター/プロデューサー]

 

番組制作会社の制作部長だった頃、私は「300円の不正」で協力会社のADさんの首を切ったことがあります。彼は経費の精算で領収書の“100円”に「ひと筆」加え“400円”に書き換えたことが発覚し、局のプロデューサーから解雇を命じられました。

そのADさんはロケ中に出演者が喉が渇いたというので自販機で飲み物を買いました。自販機ですので領収書はありません。それでは精算が出来ないため、飲み物代300円分を別の領収書に乗せてしまったのでした。

私は局のプロデューサーに陳謝し、情状酌量をお願いしましたが、コンプライアンスやコーポレートガバナンスが厳しく言われはじめたころでもあり認められませんでした。

むかしはどんぶり勘定もあった民間企業ですが、今や経費の精算に領収書も不要、支払先や使途の説明も不要などということはあり得ません。どんな小さな企業でも上司や経理担当者がチェックをします。

一方で兵庫県の号泣県議の政務活動費の精算は大金でありながら領収書なし、支払先、使途説明なしなどでもOKになっていたというのですから無茶苦茶です。しかも驚くべきはその精算が県議会のガイドライン内であるということです。

議員だからお金の使い方にチェック不要もしくは大甘でいいなんてことはありません。議員もふつうの人です。それなのに議会事務局に使途を正す強制権限がないというのも妙な話です。民間は進化しているのに政や官は考え方が旧態依然なのでは。

議員はとても忙しく、精算書類を細かく整備するのがたいへんだとか、議会事務局側の精算チェック事務がたいへんだという声もあるようですが、民間のサラリーマンはみんなやっています。会社もきちんとチェックしています。営利企業の民間にできて、税金を使う政や官にはできないというのは理屈がとおりません。

お金の話ですからせめて民間も政も官も格差なしでお願いしたいものです。

もし議員側も事務局側も多忙で人手不足というなら巷に溢れるヒマな老人たちに頑張ってもらったらどうでしょう。

たとえ安いギャラでも、おそらくは無償のボランティアでも、社会参加してお役に立ちたいと協力してくれるシニアはたくさんいると思います。そう言えばたしか号泣県議のスローガンは、県の不正経理問題の追及と、高齢者対策もあったのでは。

コンプライアンスやコーポレートガバナンスが厳しく言われはじめて、多くの企業はセミナーなどを開いてセクハラ、パワハラについての社員教育を徹底しました。それまでふつうに話していたごく軽い下ネタや親しみをこめた冗談でもセクハラやパワハラになるということを社員へ繰り返し教育していったのです。

そして民間ではセクハラ、パワハラに関する常識が大きく進化したと思います。

一方で、都議会にせよ国会にせよ、セクハラヤジの議員さんは非常識としか言いようがありません。こちらも民間の常識進化に議員の常識がまったく追いついていないように思えます。こちらも旧態依然ですね。

セクハラヤジの大西英男衆院議員の謝罪後の釈明、

『40年間少子化をライフワークに取り組んでいる。優秀な人ほど早く子どもを作った方がいいと思い、どうした?早く結婚しないのか?、と男女問わず言ってきた。』

などという言い訳の文言がまたセクハラのニオイぷんぷんであることに気がつかないのですから大西議員という方は救いようがありません。

都議会のセクハラヤジの自民党・鈴木章浩都議にいたっては、セクハラに留まらず、嘘つきであり、選良である前に人としてあまりにオソマツです。

鈴木章浩都議は当初、ヤジの主が自分であることを平気な顔で否定し、そればかりか『(セクハラヤジは)辞任に値する発言だ。』とテレビカメラに向かって堂々と述べていたのですが、発覚後そのことを指摘されると卑怯にも、『そのような発言をしたかどうか記憶がない。』と言い出しました。その場面は何度もテレビに映っているのに。

そしていまだ議席に居座っていらっしゃいます。

自分の発言にまったく責任を持たない人、自分の発言をすぐ忘れてしまう信用ならない人は民間ではまったく通用しません。それでも議員は通用するのだとすれば、政民格差がひどすぎます。

それから、号泣県議のトンデモ日帰り出張がカラ出張であった場合、民間では支払い金を返金させた上で懲戒解雇、場合によってはプラス刑事告訴です。けっして“辞任勧告”ごときでは済みません。

 

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藤沢隆

藤沢隆(ふじさわ・たかし) テレビディレクター、プロデューサー。 バラエティ、報道、情報、すべての番組を手がけている。 大手制作会社・元取締役。