映画「スポットライト 世紀のスクープ」はプロのジャーナリストを知るための素晴らしい教科書だ[茂木健一郎]

茂木健一郎[脳科学者]
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今年度のアカデミー賞の作品賞と脚本賞を受けた映画Spotlight『スポットライト 世紀のスクープ』を、アメリカから帰る飛行機の中で見た。すばらしかった。
映画『スポットライト』は実話にもとづいており、2003年にピュリッツァー賞を受けた『ボストン・グローブ』紙の調査報道の経緯を描いている。脚本がとてもすぐれていて、報道とは何か、本質を考えさせる映画である。
カトリック教会の不祥事を探っていくうちに、問題の広がりが明らかになってくる。その時点で報じようとあせる若手記者に対して、編集長がカトリック教会の「システム」としての問題を報じるまではダメだ、と止めるシーンが象徴的だ。
【参考】「報道の自由」の低下は日本が発展途上国に戻りつつある証か?[茂木健一郎]
インターネットの登場により、報道の仕方は変わった。しかし、一つの問題について、時間をかけて、裏をとりながら、全体像を描いていくという仕事は、フルタイムの仕事であり、プロフェッショナルのジャーナリストでないとなかなか難しい。
『スポットライト』は、プロのジャーナリストがある問題を追求する時に、どのようなことに注目して、どのようなことに苦労するのか、壁は何か、圧力はどうかかってくるか、そして、どうやって最終的な「記事」にまで持っていくのかという問題についての、素晴らしい教科書になっていると思う。
学生さんと話していると、いろいろと環境が変化していても、新聞やテレビなどの伝統的なメディアでジャーナリストをやりたい、という人も多い。そのような夢を持っている人には、ぜひ、『スポットライト』を見て欲しいと思う。
ウィキリークスのような存在が台頭してきても、結局、その内容を精査して報じる役割を、伝統的なメディアが担っている理由は、伝統的なメディアの中に蓄積されているジャーナリズムについての知恵とノウハウゆえだと『スポットライト』は教える。
日本でもそうだと信じたい。
 
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