<印象操作をするテレビ報道>メディアは「事実」を重んじなければ信用されない


榛葉健[ テレビプロデューサー/ドキュメンタリー映画監督]

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<ニュースの印象操作>

憲法は国の根幹に関わることで、世論調査をニュースで伝えるには慎重な表現が求められることは言うまでもない。かつて、こんなニュースの見出しがあったことに驚いたことがある。日本テレビ系の「NNN24」が、2014年5月3日に放送した憲法記念日のニュースの見出しだ。

「憲法改正めぐり“賛成派”“反対派”が集会」

「憲法改正に反対する」とは、聴いたことの無い言葉づかいだ。「護憲派」を「反対派」と言い換えることで、「改憲」のみに正義があって、「護憲」を抵抗勢力であるかのように印象づける操作をしている。

どちらの意見もあっていい。そしてニュースを伝える者は、その双方を尊重する責務がある。だがこの「NNN24」は、その配慮がひどく欠けている。

ここ数年の世論調査では、社によって違いはあるものの「護憲」「改憲」の支持はほぼ拮抗しながら、やや「護憲」が多い傾向がある。にも拘らず「NNN24」の制作者は「改憲」を前提とした文脈で語っている。

2年前とはいえ、こんな偏向したニュースが放送されていたことに驚きを禁じ得ない。この放送には拭いがたい作為があり、誰かの「恣意」が働いている。

報道に携わる者が大切にしなければいけないのは、「事実」だ。そこに目をつぶり、特定の集団や集合体の代弁者になった時、それは「報道」ではなく「宣伝」=プロパガンダになる。

【参考】メディアが「報道」ではなく「広報」になった国は必ず衰退する[茂木健一郎]

<事実に従順であれ>

一見、平等に扱っているようで、実は「不適切」と言ってもいい表現が、先日、テレビで放送された。

2016年5月2日に放送されたNHK総合テレビの「クローズアップ現代+」。「密着ルポ わたしたちと憲法」と題した特集は、憲法記念日を前に「護憲・改憲」それぞれの主張をする人々を紹介する内容だ。

番組全体としては、双方の市民の声を集めているのだが、紹介する順番に“作為”がにじみ出ていた。番組冒頭で、改憲の賛否を問うNHK独自の世論調査の結果を報じ、横長の棒グラフに以下の順番で紹介した。

「改憲」は必要ある= 27%

「改憲」は必要ない= 31%

「どちらともいえない」= 38%

この画像を見てすぐになぜ、「改憲は必要」を最初に記す必要があるのか? と首をかしげた。

こうした客観的な数値を紹介する際に重要なのは、「どちらでもない(判断回避)」「無回答」を除き、回答の多い項目を先に、少ない項目を後にするのが常道だ。

つまり今回なら、

1「改憲は必要ない」31%

2「改憲は必要ある」27%

3「どちらでもない」38%

にすべきだったはずだ。合理的に説明できるのであれば、順序を逆にしても問題は無いが、今回の場合はさしたる理由が見当たらない。

実はこの番組では、世論調査の紹介順だけでなく番組全体の構成が常に、「改憲派」の声の紹介を先にして、「護憲派」の声を後にしていた。

【参考】「報道の自由」の低下は日本が発展途上国に戻りつつある証か?[茂木健一郎]

「クローズアップ現代+」が全体を通して、調査結果と逆の順序で紹介したのは、なぜだったのか? 潜在意識下で、「改憲」が優先される論調を視聴者に印象付けようとしていなかったか? それとも制作者が何も考えなかっただけなのか・・・。

メディアに携わる人間にとって重要なことは、「事実に従順である」姿勢だ。

一国の首相が何を言おうと、政治家が何を言おうと、組織のトップが何を言おうと、メディアの人間は、知りえた「事実」を何よりも重んじる。そこからブレないことが、世の中から信用して頂ける唯一の道だ。

 

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榛葉 健

榛葉健(しば・たけし) テレビプロデューサー、ドキュメンタリー映画監督 1963年東京生まれ。1987年、在阪民放局入社。さまざまなジャンルで幅広くドキュメンタリーを制作し、日本テレビ技術協会賞、坂田記念ジャーナリズム賞などを受賞。世界最高峰チョモランマの取材では、登山家たちが放置する大量のゴミを世界のテレビで初めて告発。1995年以降、阪神・淡路大震災関連のドキュメンタリー14本を制作。そのうち『with…若き女性美術作家の生涯』は、「日本賞・ユニセフ賞」「アジアテレビ賞」など数々の国際賞を受賞。東日本大震災の発生後は、私費で宮城県南三陸町や気仙沼市などに通い続け、映画「うたごころ」シリーズを制作。全国の劇場をはじめ各地で上映の輪が広がっている。