アメリカ大統領として初めて広島を訪問するオバマ氏は「心の中で謝罪」する?[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

***

映画『博士の異常な愛情』(Dr. Stragelove・1964)の中で、カウボーイ姿のアメリカ人の保守強硬派のひとが、核ミサイルを投下しようとして、なかなか投下できず、最後は手動で投下に成功して、いっしょにロデオのように落ちていくシーンがある。

このシーンを見て、私の畏友、哲学者の塩谷賢は、

「核爆弾を落とす、ということの意味よりも、目の前の、うまく落とす、という課題を遂行するということだけが、あの男にとってのすべてになってしまったのだ」

と評していた。本質を衝いたことを言うなと思った。

核兵器が投下されたら、人類に災厄をもたらすことは当然のことだ。核兵器は非人道的である。どんな国の、どんな指導者も、核の引き金を引く権利も、能力も本来はないはずだ。にもかかわらず人類は核兵器を手にして長い。

問題は、核兵器に関する不完全情報だ。どのような悲惨なことがあるのか、それを知らないで開発し、配備し、それに基づき抑止論を語る人たちがいる。本質的に起こっているのは、『博士の異常な愛情』のあのシーンと同じことだ。

オバマさんが現職米大統領として初めて広島を訪問されるという。謝罪はしない、ということだが、個人的には、オバマさんは、心の中で謝罪していると思う。これは終わりでなく、始まりであって欲しい。

核兵器の惨禍についての情報の偏在が正される長い運動の始まりになって欲しい。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。