<声優も俳優だ>コント舞台「更地12」に出演の「ONE PIECE」ルフィ役・田中真弓が語る俳優論


メディアゴン編集部

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5月10日、メディア批評サイト「メディアゴン」の公式ニコニコ生放送に、2016年5月20日から「下北沢シアター711」で始まるコント舞台「更地12」(http://www.vaudeville-show.com/sarachi12/)の主要メンバーが出演した。

座長で演出の大森ヒロシ、「イモ欽トリオ」としてもお馴染みの最高齢・山口良一、「昨日、悲別で」の主役二枚目天宮良、そして「ONE PIECE 」ルフィ役で知られる声優・田中真弓の4名。

コント舞台「更地」は今回第12回目を迎える。最近ではなかなか見ることのできない「お金を払ってでも見たい」良質な笑いを作り上げてきた話題の人気舞台だけに、番組の盛り上がり方も尋常ではない。

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さて、番組ではやはり田中真弓の「声優話」には注目が集まる。「ONE PIECE(ルフィ)」「ドラゴンボール(クリリン)」「天空の城ラピュタ(パズー)」など、一度は聞いたことのある「あの声」だけに、ファンならずとも思わず見(聞き)入ってしまう。

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現在、声優になりたいという若い人は数多い。しかし、なかなかその実態がよくわからないのも事実。番組中では、田中真弓の「声優/俳優論」でも話が弾んだ。

例えば、番組に寄せられた「声優学校に行けば声優になれますか?」という視聴者からの質問に対する出演者たちの本音トークは、普段見えてこない「声優/俳優」の気持ちを知るうえでも興味深い。

田中:(「声優学校に行けば声優になれますか?」の質問に対して)これはねー…。

大森:難しい!

田中:こういう話(大森さんとも)よくするんですよね。

大森:今の方って声優さんと俳優さんとを分けるんですよね。俳優さんが声の仕事をやられてるという認識ではない。

田中:「声優」と認識されてるんだから「声優」でいいじゃないか、と。もう60歳過ぎたらそう思ってますよ。でも若い頃はやっぱりちょっと尖ってて、30代の頃が一番だったんだけど、でもほら、天宮さんみたいに映像の仕事をしているわけではないじゃないですか。声の仕事だけであとは全部舞台。劇団にいたから。テアトル・エコー出身なんですけど。そうだったから俳優って言っても「えっ? でもあなたを知らない。声は知ってるけどあなたを知らない」って。やっぱり映像に出てる人を「俳優」って言うんだって。

山口:顔を認識されて初めて「俳優」なんだと。

田中:そう。じゃあすみませんってこだわって、30歳…40歳くらいのくらいの時にやめましたけど。じゃあ(肩書きを)「舞台俳優」にしてください、ずっと舞台やってるんですからって言った時期もあったけども、今はもう…。でも本当は…。

山口:でも本当は「俳優」ってことですもんね。

田中:本当はね。たまたま声だけが露出している状態。作業としては同じ事をやっているっていうふうに、うん。

大森:学校はどうなんですかね? 声優さんの学校ものすごいでしょ、今。

田中:そうなの。みんなね、「俳優コース」があるのに「声優コース」みたいなことができちゃうんで、そうするとそこでカリキュラムを分けなきゃいけないと思うんですよ、学校側が。そうすると「声優コース」って座学になっちゃうんですよ。でもそうではないんですよ。アニメの声ってもうお芝居なので、たまたま声だけを持ってかれるけど「俳優」の作業なんですよっていうことをまず学校側に伝えなきゃいけない。

山口:声優の学校やコースだと技術的なことを教えたりするわけ? たとえば見てるアニメとか洋画に声を合わせるとかそういう技術的な訓練もするの?

田中:そうそう、アテレコ実習みたいな。そのほうがみんながやりたいことなの

山口:まあそうだよね。それやらないと「いや、俺俳優は別に…。外郎売(ういろううり)とかやりに来たんじゃねえよ」みたいなね。実地で教えてくれるほうが本人たち嬉しいよね。

田中:そうそうそう。

山口:でも、(学校を)出たからすぐになれるもんでもないもんね。ほとんどの人がなるんだったら声優だらけになっちゃうもんね。

田中:だから私も劇団(出身)なのでいろいろそう言われると、やっぱり「演劇をやって、(声優は)それからだよ」って。

天宮:お芝居ができなければそういうこともできないですもんね。

大森:ねぇ。だってその気持ちで喋るわけじゃないですか。

天宮:僕らもアフレコ、自分たちが芝居したのに声をあてる。それがねぇ、いやぁものすごく難しい!

山口:ヒーロー物とかね。

天宮:撮るときに「ここ、うるさ過ぎるんでアフレコにしますからね。それを踏まえた芝居をしてください」って言われるときがあるんですけど、どうやっていいかがわからず、ただきっかけを自分で憶えておくようにって。「こっち見たら喋る」とかそういうふうにしておかないと、後であなた自分の首を絞めますよ、っていう。

山口:突然喋り始めても(きっかけが)わかんないんだもんね。

天宮:最初のうちなんかわからないですから秒数をコンマ単位で書いて、それでこのタイミングで喋り始めるとか。いやぁ、自分のことですらできないですよ。

山口:俺、1年間ヒーロー物の博士の役をやってたんだけど、あれも全部アフレコ。でも、だんだん慣れてくると(台詞を)言う前に少し息を吸ってる微妙な動き、それをわざと入れるみたいな。あと、現場は多少噛んでもいいわけじゃないですか、音録らないから。そういうとき、今日はちょっと噛みそうな台詞だなってときは唇が見えない角度にちょっと身体動かして。ちゃんと後で(アフレコで)言えばいいからね。そういうズルいことを(笑)

大森:そんな姑息なことを(笑)

山口:でもやっぱりホント、自分(自身に声を充てるの)が一番難しい気がした。

田中:自分に限らず日本語に充てるということは寸分違わず口が合わないといけないから。アテレコっていうのは普通は外画だから、開けるときと閉じ口だけを合わせれば間はそんなになんだけど、日本語に充てるっていうことは相当難しい。

山口:自分はその時と同じように喋ってるつもりでも微妙に心理描写が違うとスピードが違うじゃない。出だしは一緒なのに早く終わっちゃったり。

天宮:あとすごく身構えてやるから、そのときにやった自然な楽な声じゃないんですよ。

山口:さも今マイクの前で喋ってます! みたいな。

天宮:なんか読んでるみたいな感じになっちゃうんですよ。

田中:自分の身体が動いてないからね。

山口:そういう面で言うとね、やっぱり声の仕事をやってる人はすごいよね。

田中:いや、だからそこはもうね、どっちもどっちっていうか…。私たちとしては声(の仕事)だけやってると、大森さんにも今鍛えられてますけど、感情はあっていいんですよ、もちろん感情はあっていいんだけど、その抑揚をつけすぎると…。

大森:ああ、感情を全部声に出しちゃうっていうことですよね。

田中:そうそうそう。驚いた演技で、驚くのはいいんですよ。驚いてるのは驚いてるんです。だけど、声で表現しないでくださいって。

大森:そうですね。極端に言っちゃうと、声だけで「驚いてます」をやられてるように感じてしまうんですよね。

田中:そういうダメ出しはすごくありがたいというか勉強になるし、声優の弱いところっていうのはやっぱりそこを求められちゃうので…。

山口:そこをやるのが仕事だからね。

田中:やっぱりそこを求められちゃうから、そこを置いていくわけ。わかりやすい芝居ね、悲しい人は悲しいと万人が思う。でも、楽しくても楽しそうじゃない人っているわけじゃないですか。そこは求められないんですよ。特にマンガはわかりやすい芝居を求められちゃうので。

山口:なるほど。苦労はそれなりにあるもんですね。

こんなにも芝居に熱い思いを持つ面々が、掲げるモットーは「稽古どおりに出来たら70点、舞台でそれより面白くなってやっと100点」だという。

今度は120点の芝居コントが見られるかも知れない「更地12」は、2016年5月20日(金)〜29日(日)「下北沢シアター711」にて。

 

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メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。