<適任?不適任?>「笑点」新司会者・春風亭昇太の可能性


高橋維新[弁護士]

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2016年5月22日に放映された「笑点」(日本テレビ)は、「司会・桂歌丸」の最終回であった。笑点の新司会が誰になるかは世間の興味を集めており、事前に様々な憶測も飛び交っていた。そして番組の最後に歌丸自身の口から発表された新司会者は、解答者の一人・春風亭昇太だった。

どういったプロセスを経て昇太が新司会者に抜擢されたのかはわからない。何より、昇太がオバケ番組「笑点」の司会に相応しいかどうかの判断は、次週以降の放送を見てからになるだろう。

そこで、本稿では、そもそも「笑点の司会」という仕事に何が求められているか、これまで解答者として番組に関わってきた昇太を見たときに、この仕事ができそうかどうか、という二点について考えてみたい。

笑点の司会の仕事は、大きく分けると三つある。

(1)進行

冒頭自ら挨拶を行い、解答者の面々に挨拶を振って、大喜利のお題を説明し、アシスタトの山田君に必要なものを配らせ、番組の終わりにはまた挨拶をする。大喜利のお題自体に自分が話す部分があれば、これもやる。これは、「雑用」であって、客前で緊張せずに台本が読める人なら誰にでもできることだろう。そういう意味では、「笑点の司会」として本来期待されている役割ではなく、あくまで副次的に司会にやらせているに過ぎない仕事だと言えるだろう。

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(2)ツッコミ

これには、座布団の差配も含まれる。

大喜利の答えがそれだけでウケたのであれば、特段、司会が何をする必要もない。しかし、様々な理由でウケないこともある。あるいは大喜利の答えがウケたときに、ツッコミを入れれば更にウケをとれるという場合がある。このとき、適切な間で、適切な言葉をチョイスして、ツッコミを入れてやる必要がある。時には言葉を入れるだけじゃなく、座布団を取り上げるということもやる。

すらっと書いてはみたものの、これらはそんなに簡単なことではない。回答者が言った答えがウケているかスベっているかを一瞬で見極め、スベっていてフォローが必要な状態だと判断されたら、一瞬のうちに適切な台詞を選び出さないといけない。非常に高度な技術といえよう。(笑点は、このツッコミも台本を事前に作っている可能性はあるが)

答えがスベったときの責任を全てかぶって、それでもなんとか笑いを呼び起こしてやるのが「笑点の司会」という仕事であると言えるだろう。

そして、歌丸はこれが全てできていた。

(3)イジられ役

笑点の司会者は、全体を差配する高度な技術が求められる一方で、メンバーたちから「イジられる」という役回りも求められてきた。例えば、歌丸は、主に円楽から、頭髪の点と寿命の点を散々イジられてきた。そのたびに円楽と喧嘩をするのが、笑いのひとつのパターンになっている。これは、そのスキルもさることながら、歌丸の見た目が分かり易く「ハゲでガリガリ」だったからできたことでもある。

さて、そういった3つの役割を踏まえて、春風亭昇太の司会者としての適性を見てみよう。

(1)進行については、前述のように、ある程度の技術やキャリアがあればこなせる役回りである。この点は、論じる必要はないだろう。笑点のメンバーであれば、全員できる仕事だ。

問題は(2)ツッコミと(3)イジられ役ができるかどうかである。

まず(3)イジられ役についてだが、昇太は解答者時代から散々「嫁がいない」という点をイジられており、題材は持っている。ただ題材だけであれば、他の笑点メンバーも全員持っている。

例えば、小遊三は「犯罪者・田舎者」、好楽は「仕事と金がない」、木久扇は「経営するラーメン屋がマズい・アホウ」、円楽は「腹黒、友達がいない」、たい平は「恐妻家・田舎者」などである。

しかしながら、円楽などによる司会者(歌丸)イジりは、目下の者が目上の者に歯向かうからこそ生まれる面白さである。その意味では、大喜利メンバーの中ではたい平の次に若く、番組への参加時期も一番最近である春風亭昇太が司会者になってしまうと、それができない。

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昇太よりも古株で、先輩であるメンバーが彼をイジっても、少しイジメに似た嫌らしさが出る可能性があるからだ。

加えて、(2)ツッコミも未知数である。解答者としての昇太は、自分がイジられた時のリアクションが、「なんでだよ!」と高めの声で叫ぶという子供みたいなキレ芸が多かった。キャリアの差といえばそれまでだが、やはり歌丸の真に迫る怒り方とは芸としてのレベルが段違いだった。

もしかすると、「春風亭昇太は、演技力がないのではないか?」という邪推も働いてしまう。もし、演技力が低いとなれば、笑点の司会としてはちょっと致命的だ。演技力は、全てのツッコミに関わる根幹であるからだ。例えば、ひどい下ネタを言った時の小遊三を、本心から怒っているように見せられるか。ひどくスベった木久扇に本心から呆れているように見せられるか。その演技力を歌丸は持っていた。

いずれにせよ、次週以降の新司会・春風亭昇太の差配に注目したい。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。