キンコン西野「『売れるから値段を上げる』という発想は危険」


西野亮廣[芸人(キングコング)]

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僕の独演会のチケット代は1階席が2000円で、2階DX席(会場となる東京キネマ倶楽部は2階席の方が見やすい)が2500円。まぁ、独演会のチケット代は、いつも2000円そこそこ。

去年だったか、一昨年だったか、日比谷公会堂(キャパ2000人)の公演を終えた後に、吉本興業の社員から、

「独演会はチケットが売れるから値段を上げましょうよ」

と提案されたんだけど、おもくそ断った。理由は、独演会は2000円でできるから。出演者は僕一人だけだし。

「売れるから値段を上げる」という発想は、とても危険だと僕は思っていて、その瞬間、お金は入るけど、信用が逃げていく。お金というものは信用を数値化したものだから、信用を逃がしてしまうと、長いスパンで見た時に売り上げはマイナスだ。

べつにイイ人ぶっているわけではなくて、「売り上げとしてマイナスだから、やめましょう」という理由で断った。

【参考】西野亮廣が人気番組のレギュラーを断り「ハミダシター」MCを望んだ理由

1000円で提供できるものは、それが、どれだけ人気が出ようと1000円で提供した方がいいし、500円で提供できるものは、500円で提供した方がいい。

そうして信用を積んだ方が、たとえば5万円の何かを提供する時に、「あの西野が『5万円』と言っているのだから、今回のヤツは本当に5万円の価値があるのだろうな」と5万円を出してもらえる。

独演会は2000円でできるから、2000円だし、『サーカス!』(学校イベント)は、出演者さんも多いし、舞台セットを組んだりして、5000円近くかかるから、5000円だ。それでも『サーカス!』は5~600席が、いつも即日完売。

ライブで食ってく(スタッフや、スタッフのご家族を養っていく)ことを本気で考えた時に、一番大切なのは『お客さんから信用されること』で、だから、「売れるから値段を上げよう」というのは、やっちゃいけない。

「じゃあ、ウン十万・・・ときにはウン百万という値段で売られるアート作品はどうなんだ?」

という話になる。

「紙と絵の具だけなんだから、原価なんて、たかが知れているだろう。ボッタクリじゃねーか!」

と。これは、また別次元の話で、アート作品の場合は投資の対象になっちゃっているから、値段に信用があるんだよね。

つまり、昨日まで10万円で売っていた作品を、「たしかに、おっしゃる通りです。原価が5000円なので、5000円に値下げします」とやっちゃうと、そのアーティストの信用がグッと下がる。その値下げは裏切りであって、サービスではない。

信用が無くなると、結果、食っていけなくなるんだよね。まぁ、これはライブのチケットと同列で語る案件じゃないね。アート作品もエンタメだけれど、値段設定は、どちらかというと『土地』とかに近い。

んでもって、ライブのチケットに話を戻す。

5000円でやれるものは5000円で提供すればいいし、2000円でやれるものは、それがどれだけ人気が出ようが、2000円で提供した方がいい。そして、今度の読み聞かせイベント(絵本制作途中報告会)は会場費が要らないから、チケット代は500円にした。

「『西野のライブは500円で観れる』となったら、もう5000円のライブに来てもらえなくなるんじゃないの?」

と言われそうだけれど、僕はそうは思わないんだよね。

 

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西野亮廣

芸人吉本興業
西野亮廣(にしのあきひろ)お笑いタレント、俳優、絵本作家、漫才コンビ「キングコング」のツッコミ、ネタ作り担当。1980年、兵庫県出身。タレント活動と平行しつつ、2013年2月には、ニューヨークのトライベッカ「One Art Space」で初の海外絵本絵画展「Akihiro Nishino Solo Art Exhibition」を開催。同年11月には「TDW ART FAIR 2013」の「小川登美夫賞」「川崎健二賞」も受賞。著書に、「グッド・コマーシャル」「嫌われ西野、ニューヨークへ行く」「Dr.インクの星空キネマ」「ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス」「オルゴールワールド(原案:タモリ)」など。