若者を無個性化させる「就活文化」の異常性[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

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先日、新幹線で品川駅に帰ってきて、改札を出たら、20人くらいの「就活生」の女子がいた。みな、例の白いブラウスに、黒いジャケットみたいなのを着ていた。歩く私の視野に、彼女たちの笑顔が飛び込んできた。彼女たちは、笑っていた。

何度目かの驚きだったのだが、白いブラウス、黒いジャケット以外にも、髪型や、メークの仕方まで、何からなにまでみんな同じだった。しかも、髪の毛はみんな黒かった。私は、無言のまま、品川駅近くの雑踏に入っていった。

それから2時間後くらい。私は街を歩いていた。近くにある女子大の授業が終わったらしく、たくさんの学生が出てきていた。彼女たちの服装は色とりどりで、髪の毛もさまざまな色をしていて、ヘアスタイルももちろんそれぞれだった。

【参考】<東工大入学式で学長が英語スピーチ>日本人ばかりの状況で英語を使うことに意味はあるのか?[茂木健一郎]

さて、全体主義でもなく(おそらく)、独裁者もいず(おそらく)、おまけに、個性や独創性が大切だと(おそらく)言われている先進国(おそらく)で、いかに「就活」というマジックワードで、色とりどりから、白黒同じ髪型同じメークへの変貌が起こるのか。私は理解できないし、理解したいとも思わぬ。

就活については、そもそも、新卒一括採用が現代の人権原理から見て「違法」だと私は繰り返し指摘している。さらに、就活の際に、みなが判を押したようにコピーの格好をすることが、現代において異常なことだと、私は繰り返し発言している。

誰もルールを決めているわけではないと、訳知り顔の大人は言う。しかし、リクナビにせよ、マイナビにせよ、あるいは就活生にリクルートスーツを売っている業者にせよ、今の「惨状」(敢えて「惨状」と言う)をつくっている責任を感じるべきだし、改善するための努力をすべきだと私は思う。

就活のシステムをつくっている大人たちは、この国をどうしたいのか。全体主義の国にしたいのか? 没個性の国にしたいのか? 日本の就活文化が良いなんて、ぼくは全く思わないし、こんな没個性の慣行は、一瞬でも早くぶち壊してほしい。そのための必要な行動をとるよう、現場の大人たちに要請する。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。