<「一発でKOしました!」とアナが叫ぶ相撲実況>ルール違反でないなら何でもありか? 横綱白鵬


両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

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5月27日、大関豪栄道が横綱白鵬の肘打ちにより左眼窩(がんか)壁を骨折していたことが明らかになりました。K‐1ですら禁止している『肘打ち』を『かち上げ』と相撲関係者が強弁し続けている結果です。

白鵬の危険な取り口の典型は2012年9月場所12日目、対関脇妙義龍戦でしょう。立ち合い、白鵬の右『肘打ち』が左あごに強烈なカウンターとなって妙義龍は吹っ飛び気絶します。

実況アナ「一発でKOしました!!」

白鵬は勝ち名乗りを受け、懸賞金の束を掴んで大きくガッツポーズ。決まり手は『突き倒し』。妙義龍は完全にグロッキー。ひとりで立つこともできず、呼び出し二人に支えられて土俵をおりました。

それからも白鵬はこの取り口を多用し、まるでケンカのような荒っぽい取り口も増えいます。今年の5月場所9日目、関脇勢も右肘打ちで一発KOされました。 決まり手はなぜか『押し倒し』。

そしてこの勢戦から3日後、大関豪栄道も白鵬の右肘打ちを喰らい、左眼窩(がんか)壁を骨折したのです。この時の解説者は舞の海と陸奥親方でした。勝負がついて、

舞の海「(豪栄道は)白鵬の立ち合いからの肘打ちにも怯みませんでしたよね。(中略)今日も白鵬は肘打ちできましたけどね」

アナ「陸奥さんはこの辺どう思いますか?」

陸奥親方「それもあると思いますよ。」

相撲協会の親方ではない解説の舞の海は『肘打ち』と断定的に言っています。しかしNHK実況アナは『かち上げ』と言うことが多く、相撲協会の親方衆も基本的に『かち上げ』と言っています。筆者が相撲協会に聞いたところ、白鵬のアレは『肘打ち』ではなく『かち上げ』なのだそうです。

では『かち上げ』とは、

「相撲で、立ち合いに相手が頭を低くして出る時、ひじを直角に曲げて相手の上半身を下からはね上げ、相手の上体を起こす技」(デジタル大辞泉)

とあります。常識的には、自分の『肩から二の腕』を相手の『上半身』にぶつける技で、肘で相手の顔を打つ『肘打ち』とは明らかに違います。白鵬の『かち上げ』は折り曲げた右腕の関節あたりを相手の顔に打ち込んでいます。これは明確に『肘打ち』です。『肘打ち』はムエタイ以外の多くの格闘技でも禁止されているほどに危険な技です。

しかし、大相撲の禁じ手(反則)は8つしかなく、『肘打ち』も『かち上げ』も反則ではありません。それでも相撲関係者が明かな『肘打ち』をあえて『かち上げ』と言いたがるのは、本音では『肘打ち』はマズイと感じているからではないでしょうか。

【参考】<白鵬はまた取材拒否>成長続ける新大関・照ノ富士の名古屋場所に注目

『肘打ち』が問題視されたのは朝青龍や大砂嵐、そして白鵬でしょう。日本人は子どもの頃から相撲で肘打ちや相手を蹴ってはいけないことを暗黙のルールとしてわきまえていますが、外国人力士は暗黙のルールなど知りません。

肘打ちも、もし今後ミドルキックが出てもルールを変えるか強い指導をしないかぎり文句を言えないのではないでしょうか。横綱白鵬に関しては肘打ち以外にもその振る舞いが何度も問題になっています。

横綱同士の優勝決定の一番で、立ち合いで変化するという横綱としては考えられない相撲に観客の怒りはすさまじく、優勝インタビューは白鵬が泣きべそ気味に言い訳をするような異常事態となりました。

勝負が決まった後の駄目押し、張り手の多様とケガ人の続出、猫騙し、髷掴み、相手に無礼なガッツポーズ、俵で足裏の汚れ落とし、審判批判などなど。

昨今は、もう白鵬のケンカ相撲など見たくないというファンが増えたのでしょう、相手力士への声援が一段と大きくなって来たと言います。

相撲協会が苦しい時期を一人で支えてきた大横綱に対する遠慮か、相撲関係者の対応の甘さはたびたび指摘されていますが、白鵬の振る舞いはますます印象が悪くなってきているように思えます。

ルールに反していないからと言って常識外の振る舞いを続けていると、そのうち大変なしっぺ返しを喰うかもしれません。世間はけっしていつまでも見逃してはくれないのです。そうですよね、舛添さん。

 

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両角敏明

両角敏明(もろずみ・としあき)テレビディレクター、プロデューサー。 バラエティ、報道、情報、すべての番組を手がけてきた。