<批判的なテレビ批評に疑問>テレビ黄金期なら視聴率30%以上になる番組は今もある


影山貴彦[同志社女子大学 教授/元・毎日放送 プロデューサー]

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筆者は毎日新聞と関西ウォーカーにコラムを書いている。毎日新聞の方は毎週、関西ウォーカーの方は隔週の連載だ。それらでは、テレビ番組について綴っている。毎日新聞では全国ネットの番組を中心に、関西ウォーカーでは関西ローカル番組に拘っている。

筆者がコラムを書く時に、強く意識していることがある。それは「良いところを探して褒める」ということを主にする、ということだ。

巷にあふれるテレビ論は、批判的なものがほとんどである。確かに、今、テレビを取り巻く環境は順風満帆ではない。

かつての「テレビ黄金期」と比較して、「あの頃は良かった」「それに比べて今の状況は」といった懐古主義的な記事が多くみられるのも、ある程度は理解できる。往年のテレビマンたちが、今のテレビに苛立ちを抱えて批判、提言を繰り返す気持ちも、もっともなことかもしれない。

けれど、そこで少しばかり考えていただきたい。大切なことは「今」である。

数多くの面白くない番組が並んでいる中で、同時に面白い番組も、「今」放送されている。間違いなくそうである。多くの人が気づいていないだけだ。「テレビ黄金期」に放送されていれば、視聴率30パーセント以上取るであろう番組も少なくない。

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作り手も演者も、そのクオリティーは決して下がってはいないのだ。下がりかけているのは「熱さ」くらいだろうか。そんな思いから、筆者は基本「褒める」ことを意識したコラムを今日も書いているのだ。

昨今、番組の細々したところに関してまでメディアが社長会見で聞き、それが活字になるというケースがよくある。社長は経営者ではあるが、個々の番組の責任者はプロデューサーであるはずだ。

プロデューサーがいて、ディレクターがいて、技術・美術スタッフがいて、宣伝担当がいて、放送作家がいて、演者がいる。それが番組である。社長の鶴の一声は正しいこともあるが、現場の温度とかけ離れていることもあろう。

常に現場が正しいとまでは言わないが、仮にかつて番組制作において、大いに手腕を発揮した社長であっても、番組の主役は前述のプロデューサーを初めとする面々なのである。

社長はいつまでもプロデューサー意識を強く持ちすぎないほうがいい。現場といつまでも関わっていたいのが放送マンの常だが、自らの立場をしっかりとわきまえた方がうまく回るだろう。

トップは、現場の優れたスタッフに任せる。そして良いところをしっかりと褒める。テレビの再生はそんなシンプルなところに隠れているのでは? と思えて仕方がない。

 

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影山貴彦

影山貴彦(かげやま・たかひこ)同志社女子大学 学芸学部情報メディア学科・教授。早稲田大学政治経済学部卒。専門は「メディアエンターテインメント論」。毎日放送(MBS)プロデューサーを経て現職。日本笑い学会理事。著書に「テレビのゆくえ」「おっさん力」「百恵讃」「社会人大学院生入門」など。