<脳科学者が考える音楽の聴き方>ヘビロテか、それとも新しい楽曲の探索か。


茂木健一郎[脳科学者]

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音楽を聴く時に、自分の好きなものを聴く、ヘビーローテーション型のアプローチと、常に新しいものを求めるアプローチの、どちらがいいとは一概には言えない。しかし、新しい音楽と出会うことがないと、自分のレパートリーが広がっていかない。

たとえば、中学校でビートルズを知ったぼくも、『Helter Skelter(1968)』という楽曲の存在を知ったのは、比較的後だった。それまで、数々の名曲をヘビーローテーションで聞いていたが、『Helter Skelter』を知ったとき、ビートルズの創造性のイメージが広がった。

モーツァルトも、数々の名曲がある中で、弦楽四重奏曲第19番(K.465)の存在を知った時には、へえーと思った。冒頭の22小節に、大胆な不協和音が使われている。そこを「抜けると」、普段通りのモーツァルトになるのだが、この曲に出会って、アマデウスなかなかやるな、と思った。

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ハワイのミュージシャン、Israel Kamakawiwo’ole の『Over The Rainbow & What A Wonderful World(1990)』のミックスの録音を知ったときもいいね!と思った。二つの名曲のフュージョンだが、ハワイアンにアレンジされていてぐっと来る。

自分の好きなヘビーローテーションだけでなく、新しい楽曲とあうためには、常に探索を続けていなければならないが、当然、「外れ」もたくさんある。「外れ」になってもめげずに、いつか出会う「大ネタ」を探して、探索行動を続ける必要がある。

また、「大ネタ」との出会いはランダムではなくて、ある程度あたりをつける、というか、この方向にあるのではないか、と直観することも大切である。このあたりにあるのではないか、と探し続けることが、新しい出会いへとつながる。

音楽だけでなく、文学でも、人でも、お店でも、絵でも、なんでも、自分の次の「大ネタ」を探し続けることが、脳を活性化させ、自分を広げる結果になる。ヘビーローテーションは気が楽だが、それだけだと発展性がない。コンフォートゾーンを出ることが大切である。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。