<あらびき団オールナイト祭>すべてのテレビマンは「あらびき団」を見習え


高橋維新[弁護士/コラムニスト]

***

2016年12月28日深夜に放映された「あらびき団オールナイト祭!」(TBS)を見た。2011年に地上波放映を終了した「あらびき団」という番組の5年ぶりの復活版である。

結論から言うと、過去のあらびき団のテイストはそのままで、非常におもしろかった。

あらびき団は、芸人が順々にネタを披露していくネタ番組なのだが、普通のネタ番組とはだいぶ毛色が違う。

出てくる芸人は、ほとんどが無名から売れかけの面々である。芸の内容も、その番組名が表すとおり、粗い。もっと分かりやすい言い方をすれば、クオリティが低く、つまらない。

そういう「あら芸」を披露している最中にVTRをブツッと切って、これを見ていた東野と藤井がその粗さに対して辛辣なツッコミを入れる。この「スベリ芸」を楽しむ番組が、あらびき団なのである。たまに芸自体がおもしろい人も出てくる(今回放映分だと、風船太郎など)が、それはほんの一部の例外である。

【参考】「M-1グランプリ」は深夜帯にこっそりやるようなコンテンツだ

スベリ芸なので、笑いの種類としては基本的に天然ボケの範疇に属する。ここでいう天然ボケとは、「笑われている人が、相手を笑わせるためにやっているわけではないけど、おもしろいこと」という若干広い意味である。

スベリ芸も、芸である以上相手を笑わせるためにやっていることではあるが、彼らは芸を笑って欲しいのであって、自分の芸のクオリティの低さやそれがスベっているというズレを笑われたいわけではない。そういう意味では、天然ボケと同じ構造があるのである。

天然ボケである以上、ともすれば見過ごされてしまいがちであるため、お客さんにはその存在を気付かせる必要がある。それをやるのは辛辣なツッコミを入れる東野と藤井の役目である。「あらびき団」という番組は、あの2人のコメントが最後に入って初めて成立する仕組みになっているのである。

番組も、演者の天然ボケをできるだけ探そうという姿勢で演出されている。スタジオで芸を見ている人がいればその人の冷ややかな視線を抜く。演者のズボンのチャックが開いていればそれを直させずにズームする。

【参考】三遊亭円楽が「ENGEIグランドスラム」の大トリという謎

演者の段取りが悪くてネタの準備に手間取っていたとしても、その模様をそのまま撮り続ける。過去の出演者の現在を探るロケのVTRでもこの姿勢は徹底されていた。

そういう意味では、徹頭徹尾昔のあらびき団であり、安心して見ることができた。単純に、おもしろかった。そしてあらびき団がおもしろいのは、前述の通り全体が天然ボケで構成されているからである。天然ボケは、偶発的に生じるものなので、笑いで大事な「奇襲」や「意外性」に満ち溢れている。ウケ狙いでわざと作られる人工ボケは、基本的に勝負にならない。

こういう番組がなぜか終了してしまって市民権を得られないことに、今のテレビの歪みが表れているような気がしてならない。まあ、あらびき団がメジャーになってしまったらそれはそれで違うような気もするので、今のようにひっそりと続けるのが一番だとは思うが。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.
高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。