NHKが動物番組「ダーウィンが来た!」で無残な演出過剰


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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筆者が日曜夜に楽しみにしているテレビ番組といえば、大河ドラマ直前7時半からのNHK『ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜』である。

2006年に始まったこの番組を見るのは本当に楽しみだ。何しろ動物の紀行だからウソがない(と思って)見ていられる。世界には本当にいろんな動物がいて、その動物たちのふしぎな行動に迫った映像は見ていて飽きない。何よりも、見ていて嫌な気持ちになるところがない。

ところが、2月5日の放送は無残なものであった。一体、何があったのか、NHK。

その日はアルプスに棲むリスの仲間マーモットの特集である。マーモットたちは高地の少ないえさ場を巡る争いで、ナワバリを守るために激しく戦う。目が惹きつけられて離れない。

そこに女声のナレーション

女ナレーション「動物界には激しい戦いを宿命づけられたファイターがたくさんいます。その熱ーい戦いを、今回はこの方のスペシャル実況でお伝えします」

一瞬、すごーく嫌な、確信に近い予感が走った。ほとんど、1秒もない間に筆者の頭の中を、次のよな考えが駆け巡った。放送作家が故の職業病だ。

「古館伊知郎の実況が入るのか! やめてくれー!」

「古館伊知郎は民放の報道キャスターを止めたばかりで、NHKに出演する動機は充分ある。だがこの番組のファンが期待しているのはそういう演出ではないぞ。動物を丹念に見せて欲しいのだ!」

するとワイプが入る。しかし、筆者の予感は半分はずれていた。

男ナレーション「ハイッ。実況担当、福澤朗です。」

福澤朗アナの実況が始まる。アカカンガルー、コブダイ、ビクーニャ(ラクダの仲間)の戦いである。動物のキックやパンチにはバシッ、ドンという効果音が付けられ、勇壮なBGMがかかる。

そうではないはずだ。ファンは、もし録れているならの話だが、現場のノイズで聞きたいはずだ。そもそも、福沢はなぜキャスティングされたのだろう。最初は古館に頼んだのにダメだったのではないか?

【参考】<パソコン未所有と貧困は無関係>NHKが描く「貧困女子高生」のリアリティの低さ

そうか、福沢は「わくわく動物ランド」などで動物の映像素材をたくさん持っている制作会社イーストの所属だ! だから頼んだのか!・・・などと職業病的な邪推も働く。

それにしてもこの実況はうるさい。実況の間中、そのようなことを考えていたが、やがてそんな実況も終わった。再び、女ナレーションに。

女ナレーション「福沢さーん、動物たちの戦い本当に熱いですね」

また、福沢がワイプで出る。

福沢「いやあ、私の心にもジャストミート!」

長年の番組ファンにとってはたいへん酷な、無残な演出過剰である。

新たなファン層を獲得しようとしたのなら、方向性が間違っている。それにこういうことがあると従来のファンは少しずつ離れていく。筆者は来週はまだ見たいと思っているので、こういう演出は止めて欲しいものだ。

 

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