<フジテレビには“TV局の力”がまだあるか>8月13日放送『FNSうたの夏祭り』の「口パク禁止」はどうなった?


高橋秀樹[放送作家]

* * *

「きくちP地上波最終決戦!」とブログに銘打った『FNSうたの夏祭り』が8月13日の夜7時から4時間にわたって放送された。

なぜ最終決戦なのか、きくちPこと、きくち伸氏がプロデュサーを務める番組『僕らの音楽』などが終わり、氏自身が地上波から異動するからである。

異動の理由は、自分の歌番組に出演する歌手に口パク禁止を言い渡したからだとされる。口パク禁止は、音楽番組のPとして当然の主張である。でも、口パク禁止で困る歌手はたくさんいる。生歌だととても聞いていられないような人が、歌手を名乗っているケースは少なくないからだ。

そういう“歌手”を抱えている芸能事務所はたくさんある。大手の事務所にもそういうところがあって、口パク禁止を公言するきくちPの人事に圧力をかけたのではないかという憶測がまことしやかに囁かれていた。

そいう中での代々木第一体育館からの生放送である。いやがおうにも注目は高まる。だが、その結果はひとまず置く。

これまで日本テレビもTBSも同種の歌番組を放送し、そこにはテレビ局としての力が、言わず語らずあらわれてしまう、と筆者はこれまで書いた。ではフジテレビの力はあったのか。TV局の力の細目には様々な有形無形のものがあるが、その大きな力の源泉の一つが、「芸能人に信頼感があるかどうか」という点である。結論から言うとその力は大いにあった。落ちたとは言われてもここ何十年も一位をひた走ってきた局である。その余力は確かにあった。

MC部分を極端に短くして愚直に構成された番組。コーダーのあとはすぐ次曲のイントロである。郷ひろみと榊原郁恵が『夏のお嬢さん』と『裸のヴィーナス』をデュエットした。見よ。その時の榊原郁恵55歳の歌衣装を。純白のフリルが付いた超ミニドレスである。この衣装はスタッフを信用していない限り着られる衣装ではない。「郁恵さん、あなたを最高に可愛く綺麗に撮ります」というスタッフの意志を榊原郁恵が信じているから着ることができるのである。

その通り、昭和のアイドル2人のデュエットは、素晴らしい出来だった。歌い終わって超アイドル郷ひろみと共演できたいわば準アイドル榊原郁恵は郷の腕にすがって感激していた。

その直後である。歌はNMB48に代わった。誰もが思った。

郷・榊原と比べてあきらかに、

「ヘタだ」

この日、口パク禁止令が効力を発揮していることは、中居正広がマイクを口から遠ざけて歌っていたことでも証明されるかもしれない。

【あわせて読みたい】