<テレビに力を>TBS芸人発掘番組『あらびき団』の復活を切望する


高橋維新[弁護士/コラムニスト]

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人工ボケより、天然ボケの方がおもしろい。これは筆者が何度も指摘している真理である。テーゼと言ってもいい。

ここでいう「人工ボケ」とは、ウケを狙って行われたボケのことである。笑いを呼び起こそうと思ってわざと作出されたボケのことである。対して「天然ボケ」とは、笑いを呼び起こそうという意図のないままに作出されたボケのことである。

笑いは「ズレ」から生まれる。ズレを受け手に感じさせるにあたって大事なのは意外性である。天然ボケにおいては、笑わせる側が笑いを呼び起こすことを意図していないため、実に奇想天外なボケが色々と出てくる。

受け手の方も「今から何か面白いことが聞ける」と意図してはいないため、ハードルは下がったまんまである。この状態で飛び出す奇想天外なボケが、人工ボケよりおもしろくないわけがない。客に、綺麗な奇襲が決まるのである。

ゆえに今のテレビのバラエティでは、人工ボケの芸人は肩身が狭い思いをしており、天然ボケキャラが幅を利かせている状態である。

芸人であれば、「アメトーーク」(テレビ朝日)が見つけた出川哲郎・狩野英孝・小沢一敬・ナダル。最近フジテレビで発掘されたみやぞん、それから天然芸人のトップに長いこと君臨しているジミー大西である。

芸人以外だと、ガッツ石松・具志堅用高・輪島功一のボクシング三人衆に、蛭子能収。女性だと一昔前に「さんまのSUPERからくりTV」(1992〜2014・TBS)を賑わしていた浅田美代子と中村玉緒。キャラクターでやっているような匂いが強いが、今だとローラだろう(外人のボケは人工ボケでも日本人にはニュアンスが伝わらないのでバレにくい。ボビー・オロゴンは、実は完璧な日本語が喋れる)。

天然でない芸人に求められているのは、主に天然のボケを引き出すためのフリと、ボケが出てきた後のツッコミである。その意味でも、人工ボケを主軸に置いた笑いのコンテンツは、どんどん隅に追いやられている。

【参考】テレビは「笑い」にとってもっともすぐれたメディアだ

インターネットの世界でも笑いの中心にあるのは天然ボケである。街で見かけたおもしろい看板、街で見かけたおもしろい人、偶然撮れたおもしろい動物の写真、ヘタクソな歌い手、スベっているYouTuber、他言語や逆再生の空耳、クソゲーやゲームのバグ、その他諸々。ここには書けないような下品で下世話なコンテンツも、大量にある。共通しているのは、「本人は笑われようと思ってやってはいないこと」を嘲笑うという姿勢である。

テレビがインターネットに勝つにはどうするか。

勝たなくてもいい、負けなければいい、というのが筆者の考えだ。せめてテレビが一つのメディアとしての存在感を保ち続けて欲しい。人工ボケでは勝負にならないので、天然ボケがおもしろい人物をどんどん見つけていくしかない。

インターネットの笑いは、笑われる方が笑われることを許容していないので、かなりグレーな世界なのは確かである。テレビであれば、タレントという「笑われることを許容した人物」を使えるので、大っぴらに天然ボケを笑うことができる。そのようなタレントを見つけるのが、テレビの使命である。

そのためにも、筆者は「あらびき団」(2007〜2011・TBS)の復活を切望している。

「あらびき団」は、その名の通り「あらびき」の芸を主に見せるネタ番組である。出てくるネタはヘタクソだったり、脚本が練られていなかったり、意味不明だったり・・・と有り体に言えば「クオリティが低い」ものばかりである。だからこそR-1・M-1の1回戦で落ちてしまうような地下芸人を地上波で露出させることができる。

「あらびき団」は、地下芸人のヘタクソさや意味不明さを嘲笑う「天然ボケ」メインのコンテンツなのである。地下芸人の中には、何をやってもヘタクソになる「天然」や、何をやっても意味不明なものばかり作ってしまう「天然」がたくさん隠れている。

こういう人を見つけて育てていくことが今のテレビにとって重要だと筆者は切に感じている。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。