<出演者は誰が決める?>テレビ局の職場カーストから考える


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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バラエティやドラマにとってワイドショーとは敵でもあり味方でもある。この理由については、一般の人も何となく分かるのではないか。

まず、基礎知識として知っておいて欲しいのが、テレビ局内における現場の序列だ。いわば職場カーストである。これはテレビのあらゆるジャンルの番組を手がけた放送作家の筆者が感じたことではあるが、テレビ局関係者の大方の人は一般論として納得してくれる序列だろう。

(1)最上位カーストは報道とドラマである。

(2)次にスポーツ。歌番組。

(3)次にバラエティ。

(4)一番下が情報ワイドショーである。

視聴率が高ければ、テレビ局の廊下の真ん中を歩くことが出来るようにはなるが、このジャンルごとの序列はそう変わらない。だいたい、バラエティや情報ワイドショー出身でテレビ局のトップになる人がいないことがそれを証明している。

バラエティがふるさとの人は「バラエティの視聴率が良くないとテレビ局全体の元気が出ない」とか言って溜飲を下げる。情報ワイドショーが生地の人は「朝の番組はテレビ局全体のスタートダッシュだから大事なんだ」と言って快感にひたる。

されど、序列は揺るがない。この揺るぎなき序列を知っていただいた上で、次の事態を考える。

あるテレビドラマがビッグタレントのキャスティングに成功したとする。売れっ子脚本家もつかまえている。残るは宣伝だ。手っ取り早い方法として、自局の情報ワイドショーに出して、告知しよう。このビッグタレントに出てもらえるなら情報ワイドショーにも否やはない。大満足だ。

ところがビッグタレントは、わがままでギャラの出ないこともある番組宣伝などには出たくないと言う。ドラマのプデューサーも説得する実力がない。しょうがないので「2番手の役者」に情報ワイドショーに出てもらうことを交渉する。ところが、今度は情報ワイドショー側がその役者では視聴率が散れないので出すのは嫌だ、と言い張る。

そういう時に出てきて調整役になるのが編成局の人間である。あることないこと、社内の権力も使って2番手役者の情報ワイドショー番宣出演をまとめる。そうこうしているうちに、この2番手役者の不倫疑惑やら薬物疑惑やらを週刊誌が報じたとする。よくある話だ。

もちろん、情報ワイドショーは棚からぼた餅だと喜ぶ。ところが編成局はその不倫疑惑には一切触れるなと情報ワイドショー側に命じてきた。「情報ワイドショーは編集権は誰にあるのか」と息巻くがどうにもならない。

【参考】芸能事務所がタレントの移籍を制限するのは独禁法違反?

こうしたパターンを踏まえて、8月20日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)での松本人志の発言を見てみたい。

「フジテレビに怒ってるんですよ。世の中的には宮迫(博之の不倫)より上原多香子の不倫のほうが興味があるわけです。それを『ワイドナショー』で扱うのはなしにしてくれと(フジテレビ側が)言うてきた」「俺、そういうの嫌やから触れようやと」

8月20日放送の番組では、スタッフから「フジでは扱わないことになりました」と説明されたことを明らかにした上で、前述のように上原の不倫がフジテレビでタブー扱いされていることを暴露したのだ。実際、松本が指摘した通り、フジテレビだけでなく他局もふくめほとんどのワイドショーは上原不倫の話題を取り上げてはいない。その理由について、『ワイドナショー』で松本は明言しなかった。

背後で動いているのは編成局であろう。かつて、出演者は制作現場がキャスティングしていた。しかし、今は編成局がキャスティングすることも多くなった。ようは現場を信用していないのである。というわけで、いま編成局と芸能人が所属する大手プロダクションの結びつきはとてつもなく強い。

そうなると、冒頭に掲げたテレビ局の序列も、現在の現実を反映させるためには、ちょっと書き直す必要が出てくる。正しくは以下のようになる。

(1)最上位カーストは編成局

(2)次に報道とドラマ。

(3)次にスポーツ。歌番組。

(4)次にバラエティ。

(5)一番下が情報ワイドショー。

政治の忖度が芸能でも徘徊しているのである。ところで(あるいは言うまでもなく?)、編成局出身のテレビ局のトップは数多い。

 

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