大物漫才師・松本人志に近づく安倍晋三首相の思惑?


保科省吾[コラムニスト]

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少し前の話題だが、2017年5月1日放送のフジテレビ「ワイドナショー」に安倍晋三首相が出演した。

その時のコメンテーター・ダウンタウン松本人志の発言は、総じて安倍首相の「ご意見拝聴」であった。政治家のゲストを招く時、「ご意見拝聴」に陥ってはならないことはワイドショー制作者の矜恃である。しかし、同番組ではそれが無視された放送であったと業界内でも話題になった。

安定した長期政権の割には、安倍首相の人気は山口県内にとどまっていると言われ、政治に関心の無い若い層にまで、その人気は広がっていない。そしてその理由には、筆者は「安倍首相にヤンキー成分が足りないこと」にあると感じていた。つまり、安倍首相には「やんちゃ」がないのだ。

かつて小泉純一郎前首相はX Japanのファンであることを広言し、政治家とは思えぬ言動を巧みに繰り出し、政治に関心を持たない若い層からの人気を保った。言動も常に「やんちゃ」であった。しかしながら、安倍首相が言動面で小泉元首相を真似ることは、能力面だけでなく、キャラクターの適正という点からも難しいことは誰の目にも明らかだ。

【参考】<キー局全部になぜ出ない?>安倍首相『ワイドナショー』出演情報で考えるテレビの公平中立

それを安倍首相自身も認識しているのだろう。冒頭の「ワイドナショー」への出演のように、芸能人への接近が目立つ。芸能人に近づくというカードを小泉前首相を真似して切ったのだろう。

そしてそのターゲットになった芸能人こそ松本人志だったのではないか。新聞報道などに寄れば安倍首相は「松本と会うことになった」と、周囲に吹聴することもあるらしい。

安倍首相は笑いを取ることは出来ないが、松本が発言をフォローすれば、何であっても笑いに転化することができる。その結果、安倍首相のヤンキー度合いは、以前より少しばかり増したようにも感じる。

筆者は、ほとんどがダウンタウンの漫才で構成されていた頃の『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)の松本人志のファンである。しかし、この番組は、いつの頃からか松本はフリートーク漫才をしなくなってしまった。

その理由を考えてみると、ちょうどその頃から松本人志という一流の漫才師が、自身のトーク力の劣化を自覚しはじめたのではないだろうか。

人気芸能人に近づく安倍首相と、それを受け入れる大物漫才師・松本人志。筆者には「ヤンキー成分不足を自覚する首相」と「トーク力の劣化を自覚する大物漫才師」という二者による利害の一致だったように思える。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。