2018年の日本にとって重要な「5つの問題] -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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2018年が幕を開きました。社会のすべての者にとって佳き1年になるためには、政府の役割が大きい。政治権力が「自分ファースト」の姿勢で政治を運営し、「ハゲタカ」の利益だけを尊重するなら、日本の主権者の生活は不安定なものになる。

平和、人権、民主主義という日本国憲法の基本を改めて確認して、日本政治の刷新を実現してゆかねばならない。この、平和、人権、民主主義が揺らいでいる。この原理を定めている日本国憲法を改悪する企てが進行している。

憲法の条文は絶対不可侵のものではなく、必要があれば改正することは必要だ。しかし、改正は必要でも改悪は必要でない。日本の主権者は憲法改悪を阻止するために力を尽くさなければならない。

2018年の5つ提示しておこう。いずれも2017年から引き継ぐ重要な課題だ。これらの問題をひとつずつ、的確に解決してゆくことが必要である。

5つの問題とは、

(1)憲法改定論議の内容を精査して、憲法改悪を主権者の総意で阻止すること
(2)日本の言論空間に大きな影響を与えているNHKのあり方について抜本的な改革を実行すること
(3)米国のトランプ政権が秋には中間選挙を迎えるが、トランプ政権のゆくえが世界の政治経済情勢に多大の影響を与える。その米国の動向を注視すること
(4)隣国の韓国、中国との関係が揺らぎ続けているが、東アジアの平和と安定のために日本が中国・韓国と健全な友好関係を構築することができるのかどうか。安倍政治の外交能力が問われること
(5)安倍首相が森友・加計・山口の重大疑惑に対して必要十分な説明責任を果たすこと

この5つの問題が重要である。

安倍政権与党が衆参両院で3分の2議席を占有していることから、安倍政権が憲法改定の発議を行う可能性がある。憲法改定には衆参両院の3分の2以上の議員による賛成が必要で、憲法改定が発議されれば、最終判断は国民投票に委ねられる。

国民投票で有効投票の過半数の賛成があれば憲法が改定されることになるが、一度改定してしまうと、その再改定には、また3分の2以上の議員の賛成が必要になる。したがって、憲法改定には細心の注意を払う必要がある。

安倍政権は、

(1)自衛隊を憲法に明記
(2)参議院の合区解消
(3)教育無償化の明記
(4)緊急事態条項の創設

の4点を推進する可能性が高い。しかし、1~3については、憲法を改定してまで実施する意味が乏しい。現行の法体系のなかで処理して、取り立てて大きな問題はない。

しかし、4の緊急事態条項の創設はまったく意味が異なる。自民党憲法改正草案に示されている緊急事態条項は、日本国憲法の根幹を改変してしまう内容を含んでおり、厳重な警戒が必要である。

自民党憲法改正草案に明示されている緊急事態条項は、日本国憲法の根本原理である、平和、人権、民主主義を根こそぎ否定しまう潜在力を持つものである。緊急事態が宣言され、その下で人権と民主主義が否定され、日本が戦争を推進する事態が想定されるのである。どんなことがあっても、この緊急事態条項だけは制定させてはならない。

最高裁は放送法第64条を合憲であると判断した。64条とは、テレビを設置した者はNHKと放送受信契約を締結しなければならないとする条文である。

NHKの放送をまったく視聴せず、NHKの放送内容にまったく賛同しない者が、テレビを設置しただけでNHKとの受信契約締結を強制され、受信料を強制徴収されることは、基本的人権の侵害であり、財産権の侵害である。

ところが、機能不全に陥っている日本の最高裁が、このような判決を示した。

日本の警察・検察・裁判所制度は腐敗の極致に至っていると言えるが、その原因は、安倍政権が権力を濫用して裁判所支配を強め、警察・検察の違法捜査を助長しているからである。日本全体の是正が必要であるが、そのためには、政権刷新が必要不可欠である。

政権を刷新できるまでの間は、日本の暗黒時代が続く。そのなかで、不正と不法がまかり通る時代が続いてしまうことになる。最高裁は、テレビを設置しただけでNHKとの契約締結を義務付けることを合憲と判断するなら、少なくとも、NHKがすべての国民によるガバナンス下に移行することを義務付ける必要があるだろう。

政府から独立した公共放送としてNHKの必要性を認めるなら、NHKを制度的に政府から独立した機関に改変することが必要であり、同時に主権者国民がNHKを実効支配できる制度の確立を強制する必要がある。

受信契約の強制、受信料徴収の強制を合法化するには、その前に、NHKの改変が必要になる。その点に最高裁がコミットしないのは、あまりにも無責任である。

米国のトランプ大統領は2018年に3つの関門をくぐり抜けなければならない。FRB新体制の安定化、ロシアゲート疑惑の払拭、そして、東アジア・中東外交の安定化である。秋の中間選挙に向けて、予断を許さない情勢が続く。

日韓関係においては従軍慰安婦を巡る日韓合意の見直しが焦点になる。そもそも、日韓合意は極めてあいまいな合意であって、条文の表現自体が強制力の欠如を物語っているものであった。これを根拠に日本政府が強い主張を展開しても、もとより合意そのものがあいまいであるから日本の主張は力を持たない。日韓関係の重要性を踏まえて、相互に納得できる新たな合意を形成するしかない。

そして、国内では安倍首相が森友・加計・山口疑惑に、真摯に、そして丁寧に答える責務を負う。選挙を実施したからこの問題は過去のものとの主張は通用しない。2018年の通常国会で安倍首相が真摯で丁寧な説明を実行しなければ、2018年の国会もこの問題に多大の時間を割く必要が生じる。

問題を決着させるカギは、安倍政権による真摯で丁寧な説明であり、この責務を果たさなければ問題はさらに拡大することになるだろう。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。