札束で頬叩く名護市長選を容認してはならない -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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2月4日に沖縄県名護市長選挙が実施される。争点はもちろん米軍基地問題である。

2010年の市長選で辺野古米軍基地建設阻止を公約に掲げる稲嶺進氏が「普天間飛行場県内移設反対」を掲げて出馬して市長に選出された。2014年の選挙で再選を果たし、今回、三選を目指す。

2014年11月の沖縄県知事選では辺野古米軍基地容認に転じた仲井眞弘多知事に対抗して「辺野古に基地を造らせない」を公約に掲げた翁長雄志氏が立候補して翁長氏が新知事に選出された。しかし、翁長雄志氏の辺野古米軍基地建設阻止に向けての対応は遅く、現在は辺野古米軍基地建設が強行されている。

このなかで迎える今回の名護市長選。安倍政権は辺野古米軍基地建設に反対する稲嶺進氏を落選させるために総力を結集している。この選挙で稲嶺氏が落選して、自公候補が新市長に選出されると、辺野古米軍基地建設阻止闘争は大きな分岐点を迎えることになる。

本年末に予定される沖縄県知事選にも重大な影響が及ぶだろう。辺野古に米軍基地を造らせないとする「オール沖縄」勢力は最大の関門を迎えようとしている。選挙は現職知事の稲嶺進氏と辺野古米軍基地建設を強行している安倍政権与党が推す前市議の渡具知武豊(とぐちたけとよ)氏による一騎打ちとなる公算が高いと見られている。

今回の名護市長選では公明党と支持母体の創価学会が渡具知氏推薦を決めた。報道によると、名護市内の公明票は約二千票とされており、接戦になれば結果を左右することになる。公明党県本部は普天間飛行場の県内移設反対を掲げているが、渡具知氏推薦を決めた。前回は自主投票だったが、今回は自民系候補の支援に回る。

この選挙で稲嶺氏が落選し、渡具知氏が当選すると、米軍基地建設推進勢力を勢いづけることになる。沖縄での米軍基地新設を許さないとする勢力にとって、この選挙に負けることは重大なダメージになる。

翁長雄志知事の対応の遅れで辺野古米軍基地建設が大幅に進展する結果がもたらされているが、この流れをせき止めるためにも、名護市長選挙を落とすわけにはいかない。稲嶺進氏の三選を勝ち取り、辺野古米軍基地建設阻止闘争を再出発させなければならない。

一気呵成に辺野古米軍基地建設を強行したい安倍政権も、この市長選が重要な分岐点になると判断して、文字通りの総力戦を展開している。従来同様、札束で頬を叩いて票を買い取るとの形容がふさわしい、卑劣な対応を進めている。

ジャーナリストの横田一氏がと伝えている通り、安倍政権は政府・与党要人を沖縄に派遣して、利益誘導によって票を買い取るかのような対応を示している。

12月29日には菅義偉官房長官が名護市に入った。安倍政権は米軍基地建設に反対する沖縄県に対する予算配分を削減する一方で、沖縄県や名護市を通さずに、基地受け入れを表明した名護市の三集落に対して国の補助金を直接交付するという「直接交付金」を投入してきた。

まさに、札束で頬を叩いて基地を受け入れさせる手法だが、このスタンスを今回選挙でも踏襲している。菅官房長官は12月29日、名護市のホテルで三集落代表(久志区長・辺野古区長・豊原区長)に対して2018年度予算でも直接交付金が確保されたことを伝えた。

菅氏は「政府としては最高裁の判例に従って工事を進めている。皆さんの生活環境の保全や地域の振興に関し、政府としてはできる限りの配慮を行ってきた」と述べて、基地受け入れの住民には財政資金投入などの措置を講じることを改めて強調したわけだ。

さらに、名護市内で工事が行われている「名護東道路(8.4キロ、総事業費962億円)」を視察して、未完成区間(2.6キロ)の1年半の完成前倒しと延伸調査を関係省庁に指示したことを明らかにした。国民の血税を使って選挙の買収活動を行っていると指摘されて反論できない行動を示している。

菅官房長官と連携するかのように、自民党の二階俊博幹事長が1月4日に名護市に入り、渡具知候補や選対幹部の末松文信県議らとの意見交換会に出席して、

「私は土地改良事業連合会に行って来ますから、土地改良の方に声をかけて下さい。選挙で仲間が沢山いれば、何倍も力が出てきますから皆さん、よろしく」

と述べたことを横田氏が伝えている。

「全国土地改良事業団体連合会」会長の二階氏は、民主党政権が公共事業削減の一環として大幅に削減した土地改良事業予算を、安倍政権に働きかけて以前の水準にまで戻すのに成功してきた。土地改良事業は農地規模拡大や灌漑整備などをする農業土木事業で、この予算が選挙対策の利益誘導予算として活用されてきたのである。

沖縄でも、国民の血税による利益誘導政治が全盛を奮っており、こうした安倍政権与党の対応により、米軍基地建設阻止勢力が瀬戸際に追い込まれている。沖縄に米軍基地を建設させないための極めて重要な闘争が展開されており、今回の名護市長選は極めて重要な意味を持つことになる。

米国に隷従する安倍政治を打破するため、名護市長選での基地反対勢力勝利に向けて総力を結集しなければならない。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。