<杉田発言と差別>男は「種馬」で女は「産む道具」か?

社会・メディア

山口道宏[ジャーナリスト、星槎大学教授、日本ペンクラブ会員]

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国会議員の自民党・杉田水脈(みお)氏は、男は「種馬」、女は「子を産む道具」とする確信的な差別主義者で、矛先はLGBTだけでない。子どもが出来ない、子どもは要らない、子どもは終わった、生涯独身をも非難するだけでなく、社会から排除しようというからその罪は重い。

即ち、種馬でない男は、産め(ま)ない女は、「殺して食用に回せ」といわんばかりだ。こうしたおぞましい優性思想は2年前に発生した「相模原事件」とも通底し、後者で容疑者は「社会に必要ない」「役に立たないから」と施設に入居する障害者19人の命を奪っていた。
「日本で一番生産性のないのはお前だ。アホか!」と件の杉田議員を叱るのは意外にも元・日本維新の会代表の橋本徹だ。杉田はかつて日本維新の会にも所属していた。むしろ、現在所属する自民党はその杉田発言に寛容だからその党の「体質」に世間が驚いた。
発言内容は優性思想に繋がることから国内外で人権問題として報じられ、再びの「ニッポン死ね!!」を招来する事態に。杉田は安部首相に面と向かって「子供のいない安部さんは、生産性がない。非国民だ」と説教しなくては一貫性がない。もはや「水脈」(みお)は切れているのか。
【参考】「仕事を持ち、結婚し、夫と子供の両方を養う女性」と「結婚して、仕事を辞めて、子育てをする男性」
先頃、女性の出産退職は年間20万人と発表があった。待機児童問題では保育所不足は依然深刻で「子育て環境」すらいまだ確保できずにいることが明らかになった。子供を産んだところでその始末で、今度は子供をつくらない、できない2人を「生産性がないから」とバッシングする。
我が国の女性には「不生女」(うまずめ)とよばれ長い間世間から差別された歴史があった。沢山の女性が子供を産めないことを理由に不条理にも離縁されたことなど杉田は知る由もないだろう。
杉田は「男女平等は反道徳の妄想だ」「完璧に男女平等というなら男に子供を産んでもらうしかない」が持論だ。さらに杉田は「保育所増設は日本の家族を崩壊させる」と公言している。
そもそも人のライフスタイルは多様で子どもを持つも持たないも当該の「夫婦」の問題だ。その夫婦のきめことに国家が介入すべきでない。それは人権無視、自由はく奪はもとより、国会議員の行動規範ともいう憲法99条(国会議員が憲法を守る義務)にも反している。
「産めよ増やせよ」は戦中の日本軍の兵士づくりで、今回の「生産性」発言は自民党政権のために殉職するほどの「労働者」がほしいからか。なにしろ「Karoushi」で知られる国だ。「ニッポン死ね!!」は続いている。
 

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