<『体罰は効果がある』をなぜ隠すのか?>行動分析学は体罰の有効性を示している


高橋秀樹[放送作家]
2013年11月14日

 

心理学の一分派である行動分析学は「体罰は効果がある」という調査結果を持っている。行動分析学と言ってもピンと来ない人のために解説しておくと、心のなかのことは覗けないので心理学が科学であるためには、心が考えたことの結果として現れる「行動」を研究対象としようという一派である。

パブロフの条件反射でヨダレを流すイヌ、スキナーという学者が研究を深めた行動随伴性、たとえば、「泣く赤ちゃんを毎回抱き上げていると、赤ちゃんは泣けば抱いてもらえることを学習してしまうので、毎回は抱き上げてはならない」というのは、行動分析学の代表的な考え方のひとつである。

今、行動分析学者を名乗る人はみなこのスキナーの弟子であると考えて良い。その行動分析学では体罰の効果についてつぎのように言う。行動分析学者、小野浩一氏のまとめであるが、これは行動分析学全体の考え方だと判断して良い。

  1. 強い一貫した嫌悪刺激の提示は別として、弱い一貫性のない嫌悪刺激は王道を一時的に弱化させるだけで根本的な変化はもたらさない。
  2. 嫌悪刺激の提示は生体に強い情動反応(とりわけ恐怖反応)を誘発し、さらにレスポンデント条件づけによって、その嫌悪刺激に関連する刺激、例えば嫌悪刺激を提示した人や、状況が条件刺激となって、その情動反応が至る所で頻繁に生じるようになる。
  3. 嫌悪的状況は、その状況に関わる人やものからの逃避、あるいは回避のオペラント行動を生起させるとともに、その状況に関わる人やもの、あるいは他の人やものへの攻撃行動を生起させる。
  4. 嫌悪刺激の提示は、それが随伴する行動を弱化させるだけでなく、生体の活動の全般的な抑制を招く。
  5. ある個人への罰的方法の使用は、その個人だけでなく、そこに関わる他の人間の活動性の低下や、逃避・回避行動攻撃行動を生む乱すことがある。(『行動の基礎 豊かな人間理解のために』培風館)

科学的厳密性をもって書かれた文章なので、分かりにくいが、平たく言えば『強い罰(体罰を含む)は一回なら効くがそれ以外は効かない。暴力は連鎖する、暴力は暴力を生むだけだ』ということが書いてある。ずっと不思議に思っていたのは、体罰が人類誕生以来続いてきたのは、何らかの効果があったからなのではないかということだが、ここに答えが書いてあったのである。

『体罰には効果がある』

さらにこんな研究もある。他人に罰を与える行為を行ったときに、行為者が得る感情(他罰感情)は、その人が報酬を獲得したとき得る感情と同じなのである。

つまり、体罰は楽しいのである。

だから、人間が、体罰をやめるには、倫理の力が必要なのである。理性の力が必要なのである。体罰は効果があることを理解した上で、倫理の力で体罰をとめる。それは、翻ってみれば人間しか出来ない行動である。体罰の最たるものは戦争であるが、上記の考えを敷衍すれば、戦争が効果があることをわかっていながら、やめることができるのは、人間だけなのである。