<都民の選択肢はすごく狭い>今回の都知事選は親米ナショナリストと反米ナショナリストの代理戦争に過ぎない


高橋秀樹[放送作家]
2014年2月3日

 

小泉純一郎・第89代内閣総理大臣は、「親米」で「民族主義者」という矛盾する存在である。靖国神社に参拝しても、東京裁判の最重要国アメリカからは何の反感も買わない。これはアメリカには親米の顔を見せていたからであろう。郵政民営化もである。

2005年に衆議院を解散し、その後の選挙で圧勝。小泉氏はこのシングル・イシュー・ポリティクス(single issue politics:単一問題政争)という古いけれど、日本人にはあまりなじみのない選挙戦で、抵抗勢力と名付けた人々をなぎ倒し、郵政民営化を実現した。しかし、その裏に「アメリカの旦那、これで、郵便局にある貯金と保険金は自由にしてくださっていいですぜ」という親米の顔がのぞいていることに、その時多くの国民は気づいていなかった。

これだけ気前よく親米の顔を見せてくれれば、アメリカも靖国参拝くらい見逃しておこうというものだ。今回の都知事選でその代理人となっているのが、89代お得意のシングル・イシュー戦法を授けられた「原発ゼロ」を標榜する細川護熙・第79代内閣総理大臣である。

細川氏はかつて、郵政解散直後のインタビューで、沈黙を破って

「私は議員在任中は中国との軋轢を避けるため一度も靖国参拝していない」

「小泉君はアメリカのいいなりだ。私は決していいなりにはならなかった」

と発言しているが、実に複雑怪奇なタッグとなったわけである。原発ゼロは親米の主張っぽくないが、湧き出てくるというシェールガスの利権あたりは、クサイ。

一方、安倍晋三・第96代内閣総理大臣は、反米というよりも親米になりそこなった民族主義者である。親米の顔を見せるチャンスはTPPの妥結だったが、まとめきれずにアメリカの御機嫌を損ねたようだ。そのせいか、普段は靖国参拝では文句を言ってこないアメリカが、96代の参拝にあたって、東アジアの安定を脅かすというきつい言葉を投げつけてきた。

親米の実利がなければアメリカは決して日本を信用しない。金の切れ目は縁の切れ目になるかもしれないぞというある種の脅しである。都知事選ではその代理人は舛添要一氏ということになる。

89代と違って96代は選挙戦の表には出てこないが、このナショナリスト同士の戦いに花を添える、もう一人もナショナリスト、そして、もう一人はコミュニストとあって、国政のことも考えなければならない都民の選択肢は非道く狭いのである。