<劇団ひとりがおもしろい>BS NHK「欽ちゃんのアドリブで笑(ショー)」

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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2月9日(日)の『欽ちゃんのアドリブで笑(ショー)』は、劇団ひとりが俄然おもしろくなってきた。

この日の出演者は以下の通り。

*高畑淳子:欽ちゃんに対するには、コメディ系の女優さんではないほうがおもしろいと思う。笑わせる芝居をあまりやらない女優さんがふさわしい。

*小芝風花:明るいのが何より。欽ちゃんの笑いの技法を吸収しようという意欲が前面に出でていて気持ちよい。

*がーまるちょば:パントマイムのプロとして招いているのだから、バイクに載る真似は編集で切ってあげるのが、演出側の礼儀だ。

*劇団ひとり:自分がなぜこの一座にいるか、立ち位置を理解し始めた。それ以外にも俄然おもしろくなってきたのだが、その理由は後述。

*澤部佑(ハライチ):他番組でコメンテーターなどに重用されるように、この人は場面に適切な言葉を考える能力を持っている。だが欽ちゃんの技法ではそれが徒になることもある。

欽ちゃんの芝居技法は無数にあるが、その中でも大事だと、私が了解していることのひとつは、次のようなことだ

(1)フラれたら、すぐ返す。質問したりせず、間髪入れず何かリアクションして返す

(2)すぐ返すにあたって、セリフでリアクションしてはいけない。動き(動作・芝居・演技)で返す

澤部は、さすがに「間髪入れず、すぐ返す」は出来ているのだが、能力があるあまり、セリフで返してしまう嫌いがある。このセリフを封印するとどうなるか。たとえば、次のような設定ならどうだろう。

「あなたは、空舞台の上で極端な上手端にイスに座っている。欽ちゃんがやって来て、なんでそんなところに座ってるの。と聞いた。さて」

セリフで答えてしまいたくなるが、それを封印するのだから、どう動くか。

「南海の孤島に住んでいる部族。その海岸に、壊れたウクレレが流れ着いた。拾い上げた男の所に、欽ちゃんがやってきて言った。なに?」

さて、どう動くか。動き(動作・芝居・演技)の向こうには目的が見えなければならないだろうから、さらにむずかしい。これを番組として徹底的に、出演者(とスタッフ)にたたき込もうとしているのが『欽ちゃんのアドリブで笑(ショー)』である。

[参考]崩壊するビートたけし「大抵のことは許してもらえるオイラ」というキャラクター

この日、動きで返すことの見本が示されたのが、花柳流の師匠でもある三宅祐輔にフッて踊りをつくらせるコント。三宅は、欽ちゃんの、計算されたフリに応えて、見事に振り付けを完成させて行く。三宅が若くて体力があり、振り付けの手数も持っているので、破綻しないのが(計算して破綻してはいけないのが難しいところだが)ちょっと難点。欽ちゃんにフられたら、その振り付けが出来るかどうか、空で練習してみるのはどうだろう?

さて、テレビ原稿という名の原稿用紙がある。上下2段。上段には役者の動き、下段にはセリフを書く決まりだ。何か書こうとすると通常セリフから、埋めるだろう。だが、欽ちゃんは台本作者に口をきわめて言う。「上に持っていけ。上に」。セリフでなく動きで台本を書けということだ。筆者は昔「お前の書いたセリフなんか言わねえよ」と言われて、落ち込みから立ち直るのにしばらくかかった。

おそらく、劇団ひとりは、この動き(動作・芝居・演技)が最初であることに気がつき、さらにその上を行こうとしている。欽ちゃんのフリを、さらにツッコもうとしているのである。反論する、反対する、フリ返す。反旗を翻す。舞台の上では最も欽ちゃんが偉いが、その構造を覆すことで、笑いが生まれる。

コント55号では、(坂上)二郎さんは、口先で抵抗してみせるがすぐに欽ちゃんにまるめ込まれる人であった。視聴率100%と言われる時代の欽ちゃんでは、フジテレビの『欽ドン』に山口良一、テレビ朝日の『欽どこ』に小堺一機という、欽ちゃんをツッコむ人が居た。TBSの『ぴったしカン☆カン』には久米宏が居て、欽ちゃんが答えを間違うと「バカ」と呼んで、欽ちゃんは照れた。

・・・ということなので、ガンバレ! 劇団ひとり。

いまのところ、欽ちゃんは、欽ちゃん本人として舞台上に出てきて、演者にフリを与えるが、早晩これは詰まるのではないか。欽ちゃんも演じる軽演劇が見たい。

 

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