<テレビのリモコンに隠された秘密>なぜ地上波ボタンだけが優先的に付けられているのか?


高橋秀樹[放送作家]

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テレビのリモコンをじっと見る。筆者が今日見たいと思っているBS−TBSの番組『日本の旬を行く!路線バスの旅SP』は、どのボタンを押せば見られるのか?

それにしてもTBSは抜けている。

今や、路線バスの旅と言えば太川陽介や蛭子能収が出ているテレビ東京の番組だと思われているが、元々の発明はTBS。『そこが知りたい』(1982〜1997)の名物企画である。この番組のアイデアは、実は盗られたんだよな・・・。など考えながら、リモコンをみつめるうちにBSと書いてあるボタンを発見した時には5分ほど過ぎていてもう番組を見る気が無くなっていた。

このテレビのリモコンのボタンは、どういう優先順位で割り振られているのだろうか。筆者の家はケーブルテレビにも加入しているから、数えたことはないが100を越えるチャンネルの選択肢があるはずだ。

大量のチャンネルの選択肢があるのに、なぜ多くの人はそれらを満遍なく見ていないのだろうか? 満遍なく見ている人は少数派だろう。

その理由は簡単だ。どんなに多くのチャンネルがあったって、それがどんなチャンネルで、どんな番組があるのか知らないからだ。知ろうと思っても手近にある新聞の「ラテ欄」には載っていない。

そもそもリモコンをどう操作すればそのチャンネルや番組に行きつくのか? 視聴できるのか? さえわからないこともあるからだ。

その点、地上波はシンプルだ。(1)(2)(4)(5)(6)(7)(8)(10)と、チャンネル割り当ては変わったものの、一発でアクセスできる。それ以外だとチャンネルが増えたにもかかわらず、ナビゲーションが親切とは言い難いので、なかなかアクセスがしづらい。

そもそもが、BSデジタルは、なぜ始まったのか。立ち上げの頃、開局記念番組をいくつもやったので幹部に尋ねたことがある。

筆者「BSデジタルテレビの最終目的は何か」

テレビ局幹部「今は大きな声では言えないが、受像器が普及したら、地上波の番組を全部BSに持ってきて全国放送にする。」

テレビ局幹部「地上波は、東京の局なら、関東ローカルの放送局にする」

と、その幹部は答えた。

しかし、この目標は頓挫した。番組を配信されていた地方局が声を揃えて大反対したからである。キー局が全国に電波を降らせたのでは、我々は必要なくなるではないか。死ねというのか、という叫びに似た反対の声である。初めからできない相談だった。

当初、BS最大の売りだった双方向機能では、「テレビで銀行振り込みもできるようになる」などという説明の台詞を書いたことも覚えているが、そんなことはインターネットに任せておけば良いことで、双方向には誰も興味を示さないことが早々と確定した。

そんなわけで、テレビ各局はキー局も含め、他の業界のように再編など全く進まず、今も残っているということになった。テレビ局は、最後に日本に残った護送船団なのだ。

映像の美しいデジタルという、控えめな特徴は残っているが、地上波もデジタルになって映像はきれいになったし、今後4Kとか、8Kとか、それにも投資しなければならなくなるが、できればもう、金は出したくない、というのがテレビ局の本音だろう。

で、BSデジタルが始まったのが、20世紀最後の年2000年だったから、13、4年経った頃に気づいたのである。

「我々はテレビ局なのだから、見てもらうにはいい番組を作れば良い」

「地上波はガチャガチャした、おんな子供向けの番組ばかりだから、我々は大人向けの番組を作ろう」

だから、筆者のような年配者でも、時々みたい番組がある。しかし、リモコンの操作が面倒だ。

テレビのリモコンの話にもどろう。

今の「テレビのリモコン」に最初に追加される、一押しで見られるボタンは何のボタンだろう。筆者がテレビ受像器メーカーの幹部で売れるテレビ受像器を作ろうと思ったら「YouTubeのボタンをつけろ」「ニコ動のボタンをつけろ」と言うだろう。しかし、未だに地上波テレビのボタンがメインなのはなぜだろう。

陰謀論好きの友人はこんなことを言う。

「テレビメーカーは、地上波のCMを見てもらおうとしてるからだよ」

「ある日、一斉に違うリモコンのテレビを売り出すんだよ、きっと。みんな、買い換えなさいって。それで儲けようっていう話が日本の上のほうだけの話し合いで、できあがっているんだよ。そこの間に入っているのはD………」

こんな、陰謀論さえ、少し現実味を持って見えてしまうのが、いまのテレビのリモコンを見た素直な感想である。

 

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